恋人はミニスカサンタ

 街に溢れるイルミネーション。ライトアップされるクリスマスツリー。雪の降る中、寒さを口実に寄り添うカップルを横目に見ながら、恭介は一人繁華街を歩く。
 学生服で連れ立つ姿もちらほらあったが大抵は賑やかな集団ばかりで、寂しい一人歩きは殆どいない。
 せいぜいが早足で通り過ぎる仕事帰りのサラリーマン位である。
 本日――クリスマスイブ。恋人同士が肩も身も寄せ合って過ごす定番のイベント日。
 実際、恭介とて今日を一人で過ごすつもりではなかった。これはいわゆる不可抗力という奴だ。
 つい今朝の出来事を思い出し、恭介は深く嘆息する。
 クリスマス当日はリトバスメンバーでパーティーを予定していたから、その前日であるクリスマスイブは当然理樹と過ごすつもりだった恭介である。
 何といっても恋人同士であり且つ学生最後のクリスマスイブなのだから、須らく理樹と過ごす――そうあまりにも自然に恭介は考えていたし、理樹の方もそのつもりだと勝手に思い込んでいた。
 デートとは思わせない素振りでさり気無く遊びに誘う為、イブ当日まで約束は取り付けない。当日朝に遊びに誘って、またゲーセン?などと呆れ顔の理樹を連れて先ずは本当にゲーセンへ。
 それから腹が空いたなと何気なく切り出して、実は予約済のクリスマスイルミネーションが見えるホテルのレストランに連れて行く。
 理樹はまぁあの性格だから支払の心配をするだろうが、そこはいつもの人脈で押し通すつもりだ。
 勿論その人脈はここ連日のバイトで築き上げたものであり、更に来週から年末にかけてレストランの裏方のバイトが待っている訳だが、その辺は当然秘密だ。
 凄いね恭介――そんな理樹の台詞を思えば何て事はない。因みに抜かりなく部屋の方も予約済み。
 シャンパンでほろ酔い加減の理樹と…まぁ色々、などと不埒な計画立てていた。が、その予想はものの見事に裏切られた。
”理樹。今日ゲーセンでクリスマスイベント大会ってのがあるらしいんだよ。行くだろ?”
”え、あ……ごめん。今日はちょっと…”
”――マジか?”
 呆然とした恭介に、理樹が申し訳なさそうに告げた理由は思いもしないものだった。
「まさか…理樹がバイト入れてるなんてな…」
 思わず独り言がぽつりと漏れる。そう、まさかである。これが恭介の方だったなら何ら不思議はない。
 掻き入れ時だとか何とか言ってバイトを詰め込んだ恭介に、理樹が「もう、仕方ないなぁ」なんて言いながらも手伝う羽目になって――そんな構図は容易く想像できる。
 だが、理樹の方がバイトで恭介の誘いを断るなどという想定はしていなかった。
 その上恭介は意外にも相当動揺していたらしく、理樹が何のバイトを入れているのかを聞き忘れるという失態まで犯した。
 そんな訳でいきなり予定が丸空きになった恭介は、かといって今更理樹以外とクリスマスイブを過ごす気にもなれず、一人街に繰り出し現在に至る。
「――はぁ…」
 誰も見ていないのをいい事に、今朝から既に通算五百回目程の溜息。
 いつもなら予定が空く、なんて事はまずない。
 行き当たりばったり臨機応変な日々を謳歌してきた恭介は不測の事態には慣れているし、普段なら直ぐに代わりの遊びや予定を入れる事は出来ただろう。
 それが出来なかったのは、理樹に断られすっかり意気消沈していたせいである。
 ――折角のイブなんだぜ?それなのに…なんで理樹の奴急にバイトなんて…。チクショー俺が悪いのか?…そうか、そうかもな。俺が悪かった。だから戻って来いよ理樹っ…!
 最早別れを切り出された男なみの傷心具合。割と行き過ぎだ。が、本人は至って本気である。
 カップルばかりの周囲を見回せば独り身の寂しさが身に染みる。恭介はそれを押し隠すようにニヒルな笑みを浮かべた。
 ――そうだよな…俺の方こそ今までバイトとか入れまくってたもんな…。理樹がバイト入れたって俺に文句言う資格なんかないよな。
 そうは思ったがしかし、何もクリスマスイブに入れなくてもいいだろう、とそんな我儘も頭の片隅に湧く。
 今日ばかりはさすがの恭介も空けたというのに。
 つまり裏を返せば、理樹の方は恭介と二人でクリスマスイブを過ごすなどとは全く考えてもいなかったという事になる。
 理樹の性格からしてイブをうっかり忘れて、などという事はないだろうし、かと言って急を要する金策というのも考え難い。
 恭介と違って、理樹は小遣いやお年玉などを常日頃から堅実に貯蓄するタイプだ。
 つまり、やはりどう考えても恋人の恭介と過ごす気は全然全く更々無かったという事に――。
「……ちょっと待て」
 往来でビタリと立ち止まって独り言。その奇異な行動は、幸いな事に浮かれた周囲の目には留まらない。
 だが恭介はそれ所ではなかった。この寒さの中、額に一筋汗が流れる。
 ――もしかして…まさか…。
 クリスマスイブは恋人と過ごす――当たり前だ。古来からかどうかは分からないが、少なくとも恭介が知る限りそれは日本の一般常識である。
 つまり。
 クリスマスイブを過ごす相手=恋人。よってイブを過ごさない相手=恋人に非ず。
「なにぃぃぃぃぃっっ!?」
 恭介は青褪めた形相で絶叫した。重ねて言うがここは人の溢れるクリスマスイブの往来である。
 流石の周囲も辺り憚らない大音声に眉を顰める。このままだと通報されて、君ちょっと署までと肩を叩かれるのも時間の問題だ。
 しかし今や恭介に他人の目を気する余裕は零だった。
 落ち込み度マックスの蒼白を通り越した黒い顔で、「マジか…」と呟く声も覇気がない。
 ――最近確かにバイトで忙しかったからな…それで怒ったのか?俺はもう恋人じゃないとでも考えて…。
 いや待て落ち着け。もし本当にそうなら理樹ははっきり言うはずだ。
 ”恭介なんて恋人じゃないよ”と!
「うあぁぁぁぁぁっ」
 自分で想像してダメージ二万。軽く限界突破のクリティカルヒットである。
 一般的に、一度悪い方向に働いた想像力は軌道修正が難しく、同一方向に加速する傾向がある。無論恭介もご多分に漏れず。
 不機嫌そうな理樹の顔が恭介の脳裏にありありと浮かぶ。
 ”恭介、もう僕達別れた方がいいと思うんだ”
「んなぁぁぁぁあぁっ!」
 ”恭介さ、僕よりバイトの方が好きなんじゃない?”
「違う理樹!俺がバイトしてたのは…!」
 ”あ、大丈夫。僕も恭介と一緒よりバイトの方が楽しいかなって”
「ぬがぁぁぁあぁぁぁっ」
 ”それにバイト先の先輩凄い優しくてさ。イブはその人と過ごすつもりなんだ”
「――ってそんなん黙ってられるかチクショーォォォォォォっ!!」
 そろそろ周りの数人がバックの中からそっと携帯電話を取り出そうとし始める頃合いだ。
 しかしそれより先に恭介自身が携帯を取り出した。躊躇いの欠片もなく理樹に掛ける。
 耳に当てて待つこと三十秒。聞こえてきたのは理樹の声ではなく留守番電話サービスのアナウンス。
 当然と言えば当然なのだが、恭介はがっくり項垂れる。
 ――くそっ…電源切ってんのか!?
「どこのどいつと一緒なんだよっ!理樹、そんなにソイツの事が…!」
 周りを闊歩する恋人達に中てられ何やらおかしな具合に思考が突っ走った結果、なぜか既に理樹には”優しい先輩”がいて恭介はフラれた設定になっている。
 真人も真っ青の思い込み街道まっしぐら。棗恭介の人生に於いて稀に見る動揺具合と言えよう。
 因みにさっきまで不審者扱いだった周囲の視線は、恭介の独り言から”イブにフラれた可哀想な少年”と認識され、同情に摩り替っている。実に哀れだ。
 ――理樹。怒ってるなら謝る。俺、お前に何を……。
 一体何をした?と己の所業を省みて、恭介は静かに目を伏せる。黙っていれば容姿端麗。周りの視線が同情からなにやら熱いものにランクアップする。
 が、当の本人の考えている事といったら犬も食わないなんとやら。
 一体自分は理樹に何をしたか?
 ――いやまぁ…シたな、色々…。
 そういう関係になってからまだ日は浅いが、そう言えば色々している。
 この前は羞恥に身を捩る様が可愛くてついつい恥ずかしい格好を強要し、事後理樹に怒られた。
 その前はエロい台詞を言ったら赤くなるのが可愛くてついつい言い捲ったら、やっぱり事後理樹に怒られた。
 そういえばつい先日、理樹にヤラシイ台詞を言わせたくてついつい焦らし、当然のように事後理樹に怒られた。
「………」
 反省。否、猛省。
 しかしアレはアレで理樹も悦んでただろ、と囁く悪魔の声には蓋をして恭介は改めて携帯を握り直す。
 ここは素直に反省して、次は極力意地悪せずに優しくするべきだ。ある意味反省のはの字も無いが、それを恭介に突っ込んでくれる肝心の幼馴染兼恋人は現在バイト中。
 そして反省したからには恭介の取るべき行動は決まっていた。謝るしかない。
 ――って事はまずは探し出す事が先決だな。
 思い立ったが吉日とばかりに恭介は直枝理樹捜索隊を結成しようと目論む。
 要するに、理樹を探し出して謝り倒して恋人に戻って一緒にイブを過ごそうというのが、恭介の出した格好悪い事この上ない結論となった。
 早速片手でリトバスメンバー宛てにメールを打ちながら、ビルの角を曲がる。
 その瞬間。
「お…っと」
「わっ!」
 どん、と赤い服のサンタが恭介の胸元にぶつかった。理樹と同じ位の背だな、と思いながら恭介は左手でサンタを支える。
 辺りに散らばる二段ケーキのチラシ。
「悪ぃ。前見てなかっ――」
 それきり台詞が途切れる。目の前には赤と白のコントラストが際立つ生地に身を包んだミニスカートのサンタクロース。
 今の時期には良く見掛ける格好だ。問題は服装ではなく――。
「――理樹っ…!?」
「って恭介!な、何でこんなトコにっ…!」
「そういうお前こそ何してるんだ、理樹」
「あ、あ、待って待って!シーっ!」
 慌てたようにミニスカサンタ姿の理樹が恭介の口を抑えた。
「だ、誰かに聞かれたどうするのさっ」
 こんな格好知り合いに見られたら、と理樹はあたふたしながら辺りを見回す。
 寒さのせいもあってか、理樹の鼻の頭と頬が赤く染まっている。恭介の口を塞ぐ手は吃驚するほど冷たい。
「――理樹」
「何?」
「手、冷たいな」
 温めるように息を吹きかければ、途端に理樹は慌てて手を離す。
「な、なにすっ…」
「寒いだろ。大丈夫か?」
 そう言って恭介は着ていた上着を脱いで理樹の肩に掛けた。理樹が困ったように首を振る。
「駄目だよ、恭介が寒いだろ?」
「寒くねぇよ」
「嘘だよ寒いよっ」
「なぁ理樹」
「なに?僕なら大丈夫だから上着…」
「すっげぇ可愛い」
 いきなりの恭介の一言に、は?と理樹の目が丸くなる。次いで――ボンっと音を立てそうな勢いでその顔が真っ赤になった。
「っ…か、可愛くないからっ!」
 急に何言ってるんだよ!と理樹は小声で抗議する。
 これで上着云々は忘れたなと恭介の方は至って冷静に考えながら、しかし言った台詞に嘘はない。
 ふわふわの白いファーのついたサンタクロース衣装が異様に似合うのは事実だ。その上ミニスカートだ。
 これを可愛くないと主張するのは理樹本人位のものだろう。
 恭介は、寒さと恥ずかしさでもじもじと擦り合わされる白い膝を無遠慮に眺め、ゆっくり視線を上へ。
 ――スカートの下、何穿いてんだ…?
 まさか穿いてない、なんて事は。
 涼しいポーカーフェイスの下で嵐のようにあらゆる妄想が過る。際どい所でスカートの裾が恭介の視線を遮った。
 惜しいな、と思いながら更に視線を上げると、赤くなりつつも酷く困惑したような理樹の顔。
「どうした、理樹」
「……あ、のさ」
「ん?」
「恭介、怒ってないの…?」
「――俺がか?」
「あのね、えっと…ご、ごめん」
「何でお前が謝るんだよ」
 謝るべきは俺だろ、と思ったが口には出さず理樹に先を促す。
 理樹はいっそ沈痛とも言える様子で口を開く。
「だって…折角のイブだったのに、バイトなんか…」
 僕だってホントは恭介と過ごしたかったんだけど。
 でもその、恭介をびっくりさせたい事があって。
 あのね、ちゃんと今日中には終わるんだ。あと二時間位、かな。
 バイト代でここのケーキ小さい奴だけど1ホール貰える事になってるから、後で一緒に食べようよ。
 だから…えっと、ゲーセンのイベント終わっちゃったかもしれないけど、出来たらこの後一緒に遊びに…。
 …ごめん。今朝せっかく誘ってくれたのに、断っておいて今更だよね…。
 矢継ぎ早にそう言って、理樹は恐る恐る恭介を伺い見る。
「恭介……怒ってる、よね…」
「あのな」
「うん…ごめん」
「怒ってねぇよ」
「…え?」
「というか、だ。俺の方こそお前を怒らせたと思ってたけどな?」
 苦笑してそう言った恭介に、理樹は何でと疑問符を飛ばす。
「どうして僕が怒るのさ」
「いや、それは……」
 思い返せば、とてもではないが理樹には告げられない勘違いの数々。
 それこそ理樹に「そんな訳ないだろ!馬鹿じゃないの!?」と怒られる事は必須だろう。
「まぁ色々な。――それより、バイトってチラシ配りか?」
 恭介は何でもない振りでチラシを拾って話題を変える。この辺が世渡り上手な所以だ。あっさり誘導された理樹は、慌てて散乱するチラシを拾い集め始める。
 まだ結構な枚数が残っている。これを全部理樹一人で捌くとしたら、確かに最低あと二時間は必要だ。
「理樹。これで全部か?」
「うん。あ、ごめんね。ありがとう」
 恭介の拾ったチラシを受け取ろうと理樹が手を差し出す。その手を恭介はひょいと掴んで歩きだす。
「え、ちょっ…恭介?」
「ここよりあっちの通りの方が人も多い」
「あ、ホントだ…」
「よし、じゃ俺は向こうで配るからお前はあっちの方な」
「うん…って恭介!?」
「三十分で終わらせるぞ、理樹」
 ニヤリ、と恭介が笑えば、意図を察した理樹もすぐに破顔した。
 さっさと終わらせて二人でデートをしよう――お互い気持は同じだ。
「うん。ありがとう恭介…。でも、三十分は無理だと思うよ」
「まぁ見てろって。”チラシ配りの恭狼”と呼ばれた昔が懐かしいぜ!」
「いやどんな狼さ…」
 呆れたような理樹の呟き。
 勿論、恭介は有言実行な男であって三十分で終わらせると宣言したからには終わらせる。
 ”チラシ配りの恭狼”なる名称が実在したかは定かではないが、しかし案外本当にそう呼ばれていたのかも、と思わせる勢いで恭介はチラシの八割方を捌き切ったのだった。


          *


 三十分後。
 恭介はケーキ屋の前で理樹が出て来るのを待っていた。もう少しで着替えた理樹が戸口から現れるはずだ。
 ミニスカートのサンタ姿が見られなくなるのは惜しいが、しかしあの姿が自分以外に披露されているのはそれはそれで不愉快でもあったから、着替えてくれた方が安心ではある。
 やがてケーキのケースと、何かもう一つ包みを持った理樹が恭介の元にやってくる。
「お待たせ」
「じゃあ行くか」
「あ、ちょっと待って」
 早速歩き出した恭介の袖を、理樹がきゅっと握って引き留める。
「どうした?」
 振り返った瞬間。
「メリークリスマス!」
 理樹が満点笑顔と共に、恭介の前に小ぶりな箱を差し出した。
 恭介は僅かに瞠目しながらもその箱を受け取る。
「俺にか?」
「開けてみてよ」
「――ああ。サンキュ」
 言われるまま包装紙を剥いで箱の蓋を開け、――恭介は今度こそ本当に目を見開いた。
 珍しく本気で驚く恭介の表情を目にした理樹は得意満面になる。
「実はさ、今回のバイトの報酬、それなんだ」
 ずっと欲しがってたよねヌクレボウォッチ、と告げる理樹の言葉通り、箱の中に入っていたのはマニア垂涎ものの幻とまで言われるヌクレボウォッチ。
 自他共に認める熱狂的なヌクレボファンである恭介がずっと欲しがっていたものだ。
「ちょっと前にここのケーキ屋さんの店長が持ってるって話聞いてさ、売って貰えないか聞きに行ったら、大事にしてくれるならタダで譲ってくれるって」
 流石にタダという訳には、と戸惑う理樹に、店長がイブにアルバイトを頼めるかと持ち出してきて、その報酬という事で話が纏まったのである。
 ホントは明日のプレゼント交換にと思ったけど早い方がいいよね、と嬉しそうに微笑む理樹の鼻は、何時間も外にいた寒さのせいでまだ赤いままだ。
 箱を手に持ちながら、恭介は無言で理樹を抱きしめる。
 人が見てるよと理樹が小さく悲鳴を上げたが、構う事なく腕の中に押し込んだ。
 それからこちらは寒さのせいばかりではないだろう赤く染まる耳元へと唇を押し付ける。
「ありがとな、理樹」
「…うん」
「すっげぇ嬉しい」
「うん」
「愛してるぜ」
「う…」
 肯定しかけて、途中で理樹は押し黙る。
 僅かに唇に触れている耳があっという間に熱を持つのが分かって、恭介は喉の奥で笑った。
「何だ、今更照れることないだろ」
「て、照れるよっ…」
「そっか?理樹も言ってみろよ。案外そうでもないかもしれないぜ?」
「っ…」
 忽ち理樹の身体が強張るのを感じて、しまったまた困らせてるなと恭介は自覚する。
 只でさえこんな人通りの多い所で抱きしめているのだ。理樹にこれ以上を望むのは酷というものだろう。
 恭介がそっと理樹の身体を離そうとした瞬間、だが逆に腕を引っ張られる。
「理…」
「僕も――」
 消え入りそうな声が恭介の耳朶に甘い囁きを残していく。
 吐息が耳に触れたのは一瞬で、ぱっと恭介から身を離した理樹は頬を紅潮させながら「やっぱり照れるよ、嘘つき」と小さく呟いた。
 不意打ちを食らった恭介は、まいったな、と思わず口元を押さえる。
 理樹を驚かせる予定だったのに、気がつけばこっちが驚いて喜んでばかりだ。
 ――ま、今度は俺の番、だな。
 時計に目を遣れば、レストランの予約時間にはギリギリ間に合いそうだ。
 恭介は理樹を手を取り、さり気無く言った。


「ところで理樹。……腹、空かないか?」


 
 
 
 
 

あとがき
 あー……えー…あほ恭介。これ、設定的に君僕だったんですが…どーしよねー…アホすぐる…真人並みの妄想が。  まぁ、恭介は格好つけだよなーと思う訳です。金の掛からない演出も金の掛かる演出も、自分がカッコイイと思う演出なら何でもする男。
 金掛けたからいいとか金掛けないからいいとか、そういう区別はなさそうです。あるとするなら、面白けりゃいい!でしょーねー。
 そして淡白な振りして、冷静な顔でエロい事考えてそうだとも思う。恭介を憧れのヒーロー化している理樹は、恭介が内心えろい事考えてても全く気付いてなさそうだが…。
 やっぱこんな男に付きあえるの理樹だけだ。

 しかし三人称は書きやすいやね!ギャグのテンポは落ちるけども!あと読みにくくなるけどもっ!
 書く時間がないと書き慣れた方向に逃げる傾向が……(笑)
 日記用小話のはずだったんですが、容量が大きくなりすぎたので普通にサイトに〜。

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