それは、俺が中学に上がった頃だった。
何の気なしに寄ったコンビニで、所謂アダルト雑誌を見つけた。
表紙に載っている女の子が気に入って、そのときは、深く考えずに買った。
何度か読んだが、ベットの下に隠して、それから暫く忘れていた。
この頃は、理樹がよく俺の部屋に泊まりに来ていて、理樹と話をしている方が楽しかったからだ。
が、まぁ、本人が忘れていたとしても、本が無くなる訳ではない。
理樹は時々、俺の部屋を掃除してくれていたのだが、その時に――ベットの下から本が出てきたのだ。
相変わらずの手際の良さで、理樹は床に散乱していた漫画を仕分けていく。
もう晩の十時だが、今日も理樹は泊まりだから、時間は気にしていない。
「恭介。読んだら片付けるのは基本だよ?」
「あー。そうだな」
片付けて貰ってる手前、とりあえず肯定しておく。
よく散らかってる本人にはどこに何があるか分かってるからいい、などというが、理樹の場合、ちゃんと俺の思ってる通りに分類して片付けてくれる。
俺の好きなタイトルだけ一番目につきやすい段に揃えたり。
ほんとにマメだ。
「ああ、ほら、ベットの下にも何かあるし」
「悪ぃ」
「全くもう…。ん、しょっと」
ベットの下に手を伸ばして、理樹が本を取り出す。そして――不自然に固まった。
「恭介…これっ…」
「ん?」
理樹に反応に、その手元を見遣れば、何時ぞやのアダルト雑誌だった。
しまった、と思ったが、理樹だって男だ。別に隠すほどの物じゃないだろう。
「お前も見るか?」
「みっ見ないよ!」
思った以上の過剰反応が返ってくる。耳まで真っ赤にして、理樹は雑誌をベットの下に戻した。
「こ、こんなトコに置いとかないでよっ」
「…お前、エロ本見た事ないのか、もしかして」
いまどきの小学六年で、エロ本見た事ない奴なんているのか。
自分で買って無くても、大抵クラスの誰かが持ってきたりして、結構見てるもんだろう。
聞こえない振りをしているのか、理樹はこっちを向かない。だが、襟首の後ろから、赤く染まった項が丸見えだった。
「理樹、お前…したことないのか?」
「な、なにがっ」
「自分でさ。やるだろ」
「自分でって…何をさ…?」
今さっきの余韻で幾分赤みが差しているものの、振り向いた顔には明らかに怪訝そうな表情が浮かんでいる。
どうやら本当に意味が分からなかったらしく、理樹は一つ首を傾げると、片付けに戻ってしまった。
「へぇ…」
マジで知らないのか。天然記念物並みだな。
ふと、好奇心が湧いた。悪戯心というか、そんなものだ。
足音を忍ばせて、理樹の背後に近寄る。
「――理樹」
「わっ…ちょっ、何」
「教えてやろうか」
「!」
びくっ、と理樹が震える。竦み上がる身体を宥めるように、小さな肩を撫でてやる。
「大丈夫だ、怖くない」
「きょ、恭介っ…!?」
「そんな怖がるな――理樹」
耳元で囁いて、そっと後ろから抱き締める。腕の中にすっぽり納まる身体。
中学に入って一気に背が伸びた俺からすると、理樹は以前よりも更に小さく見える。
「ほら、足開いてみろ」
「で、出来ないよ…!」
ぎゅっと縮こまった理樹に、思わず苦笑が漏れる。ホント可愛いな。
「安心しろよ。別に痛いことじゃないんだ」
「で、も…だ、駄目な事だよね…?」
「駄目じゃない」
安心させるように、理樹の頭を何度も撫でてやる。
やがて、漸くと理樹の身体から緊張が解けていく。
俺は、怯えさせないように、ゆっくり理樹の脇腹へ手を伸ばす。服の裾から、素肌へ指を忍ばせる。
「っ」
「大丈夫だ」
「う、うん…」
理樹は素直に俺に身を任せる。
薄い胸に手を這わし、硬く尖る先端を押しつぶす。きゅっと理樹が眉を寄せた。
「きょうすけっ…痛い…」
「っと、悪ぃ。…これぐらいなら、――どうだ?」
「…んぅ…」
理樹は顔を真っ赤にして震えながら、小さく頷いた。
俺は、左手で理樹の胸を愛撫しながら、右手を太ももに下ろす。
「理樹――足、開けるか」
「…っ、う、ん」
ゆるゆると、閉じていた太ももが開いていく。その間に、俺は手を滑り込ませた。
滑らかな肌を撫で上げるようにして、中心へ。
「前、はずすぞ」
「きょうすけっ…」
「大丈夫だ、怖くない」
何度も言い聞かせながら、ハーフパンツの前を開けてやる。そのまま下着の中へそっと手を差し込んだ。
「ひゃっ…!?」
「おっと、こらこら。あんまり大きな声出すな」
この時間ならもう寝てるとは思うが、鈴の部屋にまで聞こえると流石にマズイ。
胸に這わせていた左手で、理樹の口を塞ぐ。
「ん……ぅ…っ」
理樹の両手が、力なく俺の腕に縋ってくる。
くぐもった呻き声を聞きながら、直に理樹のものを握り締めてやる。
既に熱を持っていたそれを軽く扱いてやると、途端に腕の中の身体が暴れだした。弾みで手が外れる。
「やっ……やだ!やめてよっきょうす…んっ!」
「馬鹿、暴れるなって」
慌てて理樹の口を再度手で塞ぐ。
「んんーっ!んっん……ぅっ」
「直ぐ済むから、大人しくしてろ」
「んっ……んぅっ…」
「よしよし、イイコだなぁ、理樹は」
「…ん……」
次第に理樹は大人しくなっていく。落ち着いた所で、行為を再開した。
今度は怯えさせないように、ゆっくり手を上下させる。
「…ぅ、く…ん…」
湿った呼吸が、指の間から漏れる。
やがて理樹の身体に力が篭っていく。両手が俺の服を握り締め、膝が震えだした。
狭まっていく吐息の間隔。足のつま先がきゅっと丸くなる。
「――イキそうか?」
「んっ……んんっ…ぅ…!」
理樹の呼吸に合わせて強く扱いてやると、爪が白くなるほど服の袖を握り締め、理樹は大きく身体を震わせた。
「っ―――!……っは、ぁ……」
俺の手の中に吐き出して、理樹はくたりと身体を弛緩させる。
「な?気持ち良かっただろ。たまには出してやらないと、身体に悪い――理樹?」
気が付くと、理樹は俺の腕に凭れ掛かったまま、寝息を立てていた。
苦笑して、意識の無い身体を抱き上げる。汚れを拭いてやってから、ベットに寝かせた。
それから俺は、ふとベットの下を覗き込んだ。
さっきのアダルト雑誌を取り出す。
どうしようか。捨ててしまおうか――そう思って雑誌に目を落とす。
そこで、俺は改めて気がついた。
――表紙を飾る少女は、理樹に似ていた。
*
パタン、と本が閉じられる。
わたしは、直枝さんを見返した。
「……」
直枝さんは、無言で、耳まで真っ赤になっている。やはりまだ直枝さんには早かったかもしれない。
「どうでした?」
「どうって…こ、これって…!」
「先日イベントで配布されていたコピー誌ですが」
「いやそういう事じゃなくてっこの話誰からっ…!」
――え?
直枝さんの発言内容に違和感を感じた時、部室のドアが開いて、恭介さんが現れた。
「理樹、いるか?――って、いたな。何だ西園と一緒か。邪魔したか?」
「きょっ恭介!」
「ん?」
「――馬鹿!」
「はぁ?」
「べらべら人に話すことじゃないだろっ最低だよ!」
「ま、待てよ、お前何言ってんだ?」
「知らないっ」
直枝さんは、恭介さんの横をすり抜けて外へ走り出て行く。
「理樹!」
恭介さんは、焦ってその後を追っていく。
一人部室に取り残されたわたしは、同じく残された本を手に取る。
大切にバックにしまい、寮への短い道程を、大切に歩いた。
保存用回覧用観賞用に最低三冊この本を手にいれる、という新たな使命感を胸に。
おまけ。
当時を知る人に取材してみました。(by西園)
棗鈴の場合。
「ん?ああ、アレか。いや、あたしはよく分からなかったし眠かったから、馬鹿二人を置いて自分の部屋に戻ったぞ。
ん、まぁ何だ。何て言うかな、――今考えたら犯罪だろーーっボケーっ!馬鹿兄貴ぃぃ!」
どうやら、当時は自分に関係ない事はまさに「正直どーでもいい」だった鈴さんも、今は色々知識を溜めて、お兄さんの動向に目を光らせているようです。
(多分、ロリ疑惑以後。)
宮沢謙吾の場合。
「ああ、アレか。いや、まぁ…理樹を助けてやりたいのは山々だったが、…入るに入れんだろう、実際。というか西園、どこから聞いたんだ?」
当時から色々知識のあった宮沢さんは、どうやら直枝さんの体裁とか面子とかを考えたのでしょう。
今もあまり感想は変らないようです。
井ノ原真人の場合。
「お、アレか!夜に恭介ん家襲撃しようとしたんだけどよ、何か謙吾に止められて、三人の秘密って約束させられたんだよな。
ま、皆に言って回ったけどさ!何だ、西園も聞くか?」
当時はあまりそういった方面の知識はなく、知らずに何かを吹聴して回ったようです。
知識のある今も、吹聴する気満々ですが。
あとがき
やっちまったっ…!不快になった方すみませんっっ!これぞまさに山なしオチなし意味なしだ!?
何かが降りてきちゃいました…。
理樹に似てるから思わず買ってしまう、ってな事を、恭介氏は無意識にやってるといいな。あ、でもそうするとロリ雑誌にな…(爆)
いやぁ、理樹はすっごいねんねだったろうなぁと。
恭介のあとばっか追っかけて、鈴と同じくある意味リトルバスターズ以外に友達いないような気が(笑)
で、お前こんなのも知らないのかよ、と色々一個上のお兄ちゃんに教えられてしまう、と…。
ぶっちゃけ今時なら小六でも遅いんだろーなぁ。色々。
でも理樹なら恭介が教えなきゃ、無知なまま高校生ぐらいでも――ぐはっ