ダブルデート

「理樹。明日デートしないか」
「―――」
 僕は、思わず恭介の顔をマジマジと見てしまった。ええと――。
 デート…って言った?…デートってあのデート?いやそれ以外にどんなデートがあるのかって言われると困るけど。
 でも恭介だよ。あの恭介だ。もしかして僕の全く知らないデートって単語が存在しているのかもしれない。
 うん、きっとそうだ。そうに決まって――。
「理樹?どうした。嫌か?」
「えっ!?あ、いやいや…!」
「嫌じゃないなら、一緒に行こうぜ!映画のチケットがあるんだよ」
「え、あの、あの…」
 ややややっぱりデートなんですか?あのデートですかっ!?
 ていうか僕相手に何言ってるんだよ恭介っ!いやそりゃ嬉しいけどって嬉しいって何だっ!
「あのっ…で、デートって…!」
「ん?ああ、映画のチケットな、実は四枚手に入ったんだよ」
「そ、そうなんだ、四枚…四枚?」
 枚数が多い、と僕が気付いたところで、恭介が軽く頷く。
「鈴に二枚やったんだが、…あいつ、もう一枚を小毬にあげちまってな」
「…まぁ、今の鈴ならそうだろうね」
「ま、友情を深めるのもいいとは思うんだが、折角四枚あるんだ。ここはダブルデートと洒落こもうかと思ってな」
 なるほど。その顔ぶれだと、僕は鈴と、恭介は小毬さんと、って所かな。…ん?
「恭介、小毬さんとデート?」
「あー、まぁそういう事になるな」
「付き合ってるの?」
「なわけ無いだろ。お前と鈴がデートしたら、俺と小毬が組むしかないからな」
 うーん…でも別に僕だって鈴と付き合ってるわけじゃないし。ていうか寧ろ、鈴は妹みたいなものだからなぁ。
 恭介には悪いけど、そういう対象として見た事はないんだけどな…。
 そうは思いつつも、何だか嬉しそうに「行くだろ?」と言ってくる恭介に、僕は頷いていた。
 
 
           *
 
 
 翌日土曜日。
 待ち合わせの校門前で僕は皆を待つ。ちょっと早かったかな。
 少し待った所で、小毬さんが現れた。
 なんていうか…すごいフリフリのドレスがちょこちょこ左右に揺れながらゆったりやって来る。
「あ、理樹くんだぁー」
「おはよう小毬さん」
「おはようございまぁす!頑張っておめかししちゃったよー!」
「うん、可愛いよ」
「ふえっ?…あ、あうあう…そ、そっかなぁ…」
 赤くなって照れる小毬さん。ちょっと普通に着たらびっくりするような服だけど、小毬さんが着ると不思議に似合う。
 この柔らかいムードのせいかもしれない。
 そう思っていたら、小毬さんが不意にほわんと笑う。
「えへへ〜。理樹くんも可愛いっですよー?」
「――え、……ぼ、ぼくっ…!?」
 そんな満面の笑みで可愛いって言われてもっ…ていうか僕男だしっ…!
 どう応えていいのか躊躇していると、チリンとスズの音が響く。
 振り向いた先には鈴の姿。駆けてくるその後ろからは恭介。これで全員だ。
 鈴が息急き切って僕と小毬さんの前に飛び込んでくる。
「こまりちゃんっ。ごめんっ待たせたか?」
「全然大丈ー夫!ですよー」
「そうか…よかった」
 鈴がホッと安堵の表情を浮かべる。少しだけ遅れて直ぐに恭介もやって来る。
「悪ぃ、理樹。もしかして結構待たしたか?」
「全然。今来たトコだよ」
「そっか、じゃあ行くか」
「うん」
 いつもの、二人で遊びに行く時と同じ調子で、自然と僕は恭介の隣に立つ。ふと前を見ると、鈴と小毬さんが仲良く肩を寄せ合って、もう歩き始めていた。
 ……あれ?何か予想してたのとペアの組み方が違うような…。
 隣を見上げると、恭介もちょっと複雑な表情をしていた。それから僕を見下ろして、ま、いいかと笑う。
「どうせだから、手、繋いで行くか?」
「い、いいよっ…」
 流石にこの年齢でそれは恥しい…。
 辞退する僕に、恭介はやけに残念そうだ。いやいや、そんな顔されてもね?
 とりあえずはどんな映画なのと話題を変えると、恭介は直ぐに乗って来て、身振り手振りを加えて話し始める。
 そのただならぬ熱弁ぶりに、ふと既視感を覚える。あれ…なんだっけこれ。何かこういうの前にも…。
「でな、生徒達は実はスパイで…」
 ……ん?その設定って…。
「いやーやっぱ来ると思ってたぜ!ヌクレボ実写版!」
 ああ…やっぱりそれなんだ…。
 あとで鈴に殴られきゃいいけど…。
 
 
           *
 
 
「あれ見て面白いのはお前だけじゃボケー―っっ!」
「ぐはぁっ!」
「ほぇぇぇりんちゃぁぁんっ!?だだだだだめだよぉ恭介さん死んじゃうよっ!?」
 ああやっぱり…。
 映画が終わって外に出るなり、鈴は無言で恭介の背後に回った。そして怒号と共に後頭部にハイキック。
 まぁ、外に出るまで我慢していただけ、鈴も成長したよね。
 恭介だっていつもなら鈴の殺気を感知するなりしただろうけど、ヌクレボ実写版に「感動したっ…!俺は今度こそ正式にヌクレボ学園に入学してみせる!」とか息巻くイカレポンチと化していた。
 そんなイカレ状態の恭介に、鈴の蹴りが見事直撃。現在恭介はコンクリートに沈んでいる。そしてそんな恭介を更に蹴ろうとする鈴を、小毬さんが一生懸命止めている。
 まぁ…鈴の気持ちも分かるよ。はっきり言って、これは盲目的なヌクレボファンなら許せるだろうけど、何にも知らない一般人が見たら、――呆気に取られて終わるような、そういうレベルの映画だった。
 ヌクレボ信者に向けての映画、と言わんばかりの製作者側の意図が露骨で、一応少しは読んだことのある僕でも、何がなんだか分からない間に終わってしまって、ちょっと茫然とした。
 当然、――小毬さんは相当混乱しただろう。映画に誘った鈴としては、立場がないよね…。
 きっと恭介に「面白いぞ」とか言われて、ロクに題名も見ないで誘ったんだろうし。
 友達を映画に誘う、なんて一見簡単そうだけど、今まで自分から人間関係を築いて来なかった鈴にとっては、相当に勇気のいることだったはずだ。
 小毬さん達と随分仲良くなったとはいえ、誘いを断らなくなったって程度で、鈴が自分からなんて殆どない。
 そんな鈴が勇気を出して小毬さんを誘ったのに――肝心の映画がアレじゃあね…。そりゃ恭介に怒りの矛先が向くのも当然だよ。
 小毬さんに宥められ、少し落ち着いてきた鈴は、今度はどっぷり落ち込んだ表情で項垂れる。
「ごめん…こまりちゃん」
「ふぇ?どうしてりんちゃんが謝るの?」
「だって、せっかく一緒に来てくれたのに…あんな変な映画…」
「え、えっとえっと。でも面白かったよぉ?」
「――ホントか?」
「うん!なんか、ババーン!ドドーンっ!…って感じで、大迫力っ。それにりんちゃんが一緒だもん。それだけでもう充分。すっごい楽しーよー!」
「こまりちゃん…」
「うん。だから、そんな顔しないで。ね?」
 鈴の手を取って、小毬さんがにっこり笑う。
「イイ奴だな、小毬は」
「うわっ!…恭介、もう復活したんだ…」
「ハッ。当たり前だ。俺を誰だと思ってる。妹の蹴り如きで倒れると思うのか?」
「いやいや、さっき普通に地面に沈んでたよね?」
 大体、あの真人ですらノックアウトされるんだから、鈴のキックの破壊力は折り紙つきだ。
 平気なフリしてるけど、後頭部に入ってたし…恭介、頭大丈夫かな…。…いや、まぁ、いろんな意味で。
 恭介はうまく纏まりかけてる二人の所へ近寄っていく。
「鈴、小毬。映画の侘びと言ってはなんだが、お前らにこれをやろう」
 シピっと恭介が取り出したのは、――二枚のチケット。いやっ…さっきの今でそれはっ…!
「だからお前の映画は下らないって言ってるだろーーーっ!」
「がはぁっ!」
「ほわわわわっりんちゃぁぁんっ!?お、おおお落ち着いてぇぇ!?」
 うわぁ。やっぱり同じ展開に…。
 恭介の手にしていたチケットがハラリと落ちて、僕の足元に飛んで来る。
 ええと、今度はどんな映画…ってあれ?これ、映画のチケットじゃ…。
「はなせこまりちゃんっ!馬鹿きょーすけには一度しっかり思い知らせてやらないとダメだ!」
「ごふっがはっ!り、鈴っ話を…!」
「りりりりんちゃぁんっだめぇぇぇっ!?」
「――あのさ、鈴」
 なるべく落ち着いた声で鈴に話し掛けると、お前まで邪魔する気か、と言わんばかりに睨みつけられる。
 うわ、これは相当怒ってるなぁ…。
「鈴さ、遊園地行きたくない?」
「……ゆーえんち?」
 僕の突然の提案に、鈴の意識が恭介から離れる。この間に、安全域まで逃げてよね、恭介…。
「小毬さんと二人でさ、遊園地っていうのはどうかな」
「う、うみゅ…ゆーえんちか…。――こまりちゃんは…」
「うん!いいですねぇ。私も、りんちゃんと一緒に遊園地行きたいなぁ」
 小毬さんの満面の笑みに、鈴もパッと顔を輝かせる。
 そんな二人の前に、僕はさっき拾ったチケットを差し出した。
「これ…恭介が用意してくれてたのって、遊園地の入園チケットだったみたいだよ?」
「うにゃっ!?」
 また下らない映画のチケットだと思いこんでいたらしい鈴は、目を丸くする。
 恭介の事だから、最初はがっかりさせておいて、後から驚かせて喜ばせようって魂胆だったんじゃないかな。
 鈴はチケットを僕から受け取ってその内容を確認したあと、なぜかキッと眉尻をはね上げた。
「びっくりしただろ馬鹿兄貴ーーっ!」
「って待って待って待って!蹴り入れちゃ駄目だからっ!恭介にお礼言おうよっ」
「……フン!」
 チケットはしっかり持ったまま、鈴は腰に手を当て鼻を鳴らす。それから、横を向いてごにょごにょと小さく口を動かす。
「べ、別に嬉しくなんかないぞっ…ないけど、その、チケットに罪はないしな!うん。だからこのチケットは貰っておいてやる!」
 偉そうにそう言うと、鈴はフイッと踵を返して、小毬さんの腕を引っ張るようにして歩き始めた。
 まぁ、肉親に素直にありがとう、とは言えない年頃なのかもしれない。
「――恭介、大丈夫?」
「…ま、なんとかな」
 僕の隣には、ちょっとヨレっとなってる恭介。
 前方を行く鈴と小毬さんは、遊園地への経路を相談しているのか、バス停を指さしたりしながら、楽しそうだ。
「――楽しそうだな、あいつら」
 恭介は、眩しそうに目を細めて、二人を見守る。
 …そっか。ダブルデートがどうとか言ってたけど、本当は単に、鈴の事が心配だったんだ。
 小毬さん相手に喧嘩って事はないだろうけど、緊張した鈴が空回りして自爆、なんて事はあるかもしれない。
 でも、こうして見る限りでは大丈夫そうだ。
「じゃあ…僕らはそろそろ退散かな。帰る?恭介」
「何言ってんだ。遊びに行くに決まってるだろ?」
 ニッと笑った恭介が僕に見せたのは、鈴に渡したのと同じ遊園地のチケット二枚。
 え、まさか僕らも行くの?
「でも、あの二人なら心配ないと思うけど…」
「あいつらはあいつらさ。折角チケットもあるんだ、俺達は俺達で楽しもうぜ。な、行くだろ?」
「う、…うん」
 男二人で遊園地…。でも、確かにチケット勿体ないもんね。それに――恭介となら楽しそうだし。
 遊園地へは、結局バスに乗って行った。そこでもまた、鈴と恭介で一悶着あって、乗客の注目を浴びたりしながら、目的地へ。
 遊園地に到着後は、恭介の提案でまずは皆で腹ごしらえ。
 それから後は思いっきり遊んだ。
 ジェットコースターも乗ったし、良く分からない振り子みたいな乗物に、定番のお化け屋敷。
 絶叫マシン系は恭介が大興奮で、ちょっとついて行くのが大変だった。鈴と小毬さんもはしゃいでいたけど、お化け屋敷から出て来た時は、二人とも顔面蒼白。
 僕もその後恭介と入ったけど、確かに結構怖かった。…いやまぁ、恭介はお化け役の人と写真撮ったりして、すっかり馴染んでいたけどね…。
 その後迷路に入って、鈴と小毬さんとは、そこで離れ離れになった。


          *


「ねぇ恭介。ここさっきも通らなかったっけ?」
「ん?そうか?ま、同じような景色ばっかだからな」
「何かグルグル回ってるような気になってきたよ…」
 迷路の中の壁はかなり高くて、しかも当然のように同じ壁な訳で…自分がどこにいるのか、さっぱりわからない。
 辺りを見回した恭介が、思案顔でコンコンと壁を叩く。
「進んでるとは思うが、…心配なら一応見てみるか?」
「は?」
 見るって…何を。
 首を傾げる僕の目の前で、恭介が強度を確かめる様に、壁を何箇所か叩く。
「ま、この位なら平気だろ」
「恭介?」
「あ、理樹。ちょっとどいてろよ?危ないからな」
 反対側の壁際ぎりぎりまで下がった恭介が、すっと腰を落として、次の瞬間地面を蹴った。
 ダン!
「よっ…と…!」
 ええぇぇぇぇ今この人壁を走ったんですけどっ垂直にっっ!
 忍者っ!?
「きょ、恭介っ今の!?」
「今のか。壁走りっつってな。前に忍者の里ってトコでアルバイトした時に教えて貰ったんだよ」
「へぇ…ってそれどこさっ」
 もしかして本物の忍者の里なんじゃ!?
 壁の上に立った恭介は辺りを見回して、それから大丈夫だと頷いて見せる。
「ちゃんと前には進んでるぜ?」
「そっか。良かった…」
 ストンと僕の隣に降り来た恭介と、また二人で迷路を歩き始める。
 壁走りについての講釈とかを聞きながら、二人で取り留めない話をする。
 暫く進んだ所で、耳慣れた鈴の音が響いた。
「恭介。今のって…」
「ああ、どうやらこの近くにいるみたいだな」
 もう少し行くと、壁越しに鈴と小毬さんの会話が聞こえてくる。
「りんちゃん。ここどこだろーねぇ」
「――また行き止まりだ…」
「じゃあ戻ろっかぁ」
「…ごめん、こまりちゃん。何かあたし、迷ってばっかりだ」
「ふぇ?だってここ、迷路ですよ?迷路は迷うから面白んだよー」
「そ、そーゆーものか…?」
「うん!そーゆーものですっ。だからりんちゃんも、迷子を楽しもうよっ。ね?」
「そーか…うん、分かった」
 ちりん、と音がする。
「…それにしても、行き止まりばっかりで、こんじょーの悪い迷路だな…。きっときょーすけが作ったんだ」
「恭介さん?」
「うん、きっとそーだ。こんな訳分からんもの作るのは、うちの馬鹿兄貴位しかいない!」
 そう鈴が断言した所で、――僕らは見事に鉢合わせた。
「ほぇ…?」と小毬さんが目を丸くし、「うにゃっ!?」と鈴が毛を逆立てる。
 そして。
「やっぱり犯人はお前かこの犯罪者ぁぁぁーーーっ!」
「ごはぁっ!」
「うわー鈴押さえて押さえてっ!」
「ほわわわわりんちゃん暴力はだめぇぇぇっ!」
 慌てて鈴を押さえる僕と小毬さん。
 何か…いつにも増して鈴の反応が過剰というか、寧ろ敵意剥き出しって感じなんだけど…。一体どうしたんだろう。
 鈴は、ぱっと小毬さんの腕を取ると、引っ張って行って僕らから遠ざける。
 そして、びしっと恭介の顔に指を突き付けた。
「あたしと勝負しろっきょうーすけ!」
「ん?俺と勝負か」
「そーだ。どっちが早くゴールにつけるか勝負だ!」
「――よし、いいだろう」
「じゃあ、今からあたしとお前らは敵同士だからな?気易く近づいたり、声かけたりしたら、め!だからな!」
 声高にあんまり怖くない脅しを宣言して、鈴は小毬さんを引きずるよう去っていく。
 …ええと…。
「恭介」
「どうした?」
「鈴と喧嘩でもしたの?いつになく攻撃的なんだけど」
「ああいや…ダブルデートって言ったら、昨日の夜からずっとあんな感じだ」
「…なるほどね」
 鈴は、あくまで小毬さんと二人で行くつもりだったんだろう。
 そこで突然思いもしないダブルデートだなんて言われて、恭介に小毬さんを取られると思ったって所かな。
 何だか可愛いなぁ。思わずくすくすと笑っていると、恭介がやけに真面目な顔でこっちを見ていた。
「どうしたの、恭介」
「――いや」
「もしかして、恭介は小毬さんとデートしたかった?」
「――あのな」
 恭介が唇をへの字に曲げる。え、なんでそんな拗ねたような顔さ。
 ダブルデートは恭介の提案だし、そう邪推されても仕方ないと思うけど。
「俺がダブルデートって言ったのはな…」
「うん、分かってるよ。鈴が心配で、その口実だよね?」
 笑った僕に、恭介が返して来たのは、底の見えない赤い瞳。
「さあ…どうだろうな」
「どうって…それ以外ないと思うけど」
「案外、ホントの目的はダブルデートの方かもしれないぜ?」
「え、でも…それだと、目的叶わずだよね?」
「いいや?ちゃんと本懐は遂げたぜ、俺は」
「???」
 何を言ってるのかますます分からないんだけど…?
 クエスチョンマークを飛ばす僕に、恭介は頭を掻いて、小さく「まだいいか」と呟いた。
 何がまだいいんだろう…?
「さて、と。じゃあ理樹。こっち行ってみようぜ」
「あ、…うん」
 頷くと同時に、恭介がすっと僕の手を掴んだ。そのまま何食わぬ顔で歩きだす。
 突然どうしたんだろう…別に、手なんか繋がなくても…。
「恭介?」
「――なぁ理樹。…迷ったり、立ち止まったり、…時には戻っちまったりする事もあるだろうけどな。それでも…」
 恭介は、前を向いたまま握る手に少しだけ力を込めてくる。
「それでも、俺達は進んで行くんだよな。…ずっと、一緒に」
「…うん」
 きっとその言葉の真意をちゃんと理解できてはいないと思ったけれど、僕は頷く。
 振り向いた恭介が、朗らかに笑った。
「さーて。ホント迷ってる場合じゃないな。こんな迷路、さっさと突破しようぜ!」
「あの二人には負けられないしね」
「お、いい目じゃないか」
 ニヤリ、と笑ったのは、きっと僕も恭介も一緒。
 さっきの恭介の言葉は、迷路に関してのものじゃなく、もっとずっと真面目で、大事な意味だったろうと思う。
 でも…きっと今はまだ、その真意を確かめる必要はないんだろう。恭介が誤魔化している内は、寧ろ僕は知らない方がいいという事だ。
 だから、敢えて追及はせず、恭介のノリに合わせる。
 だけど――本当は僕も同じだから。

 迷っても、立ち止まっても、時には戻っても――それでも、進んでいく。
 恭介と一緒に。

 前を行く恭介の背中を見つめながら、僕は少しだけ、握る手に力を込めた。


 
 
 
 
 

あとがき
 久々に書いたカップル以前の恭理。…ほのぼのって何か安心するよね…いや、前回書いたのがアレだったので…反動でつい…。
 tureEnd後で、恭介が理樹に告白する手前、みたいな…
 恭介の本当の目的は理樹とのデート。よかったねー(笑)。そしてりんこま。うん、これでもりんこまさっ!
 あ、前回のEX記念は取り敢えず隠し(隠してないけど)へ仕舞い…。

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