籠の鳥

 汗ばんだ肌の上を、恭介の指が這う。
「…ぁっ」
 その度に、僕の身体は律儀に反応する。
 こんな身体を僕は知らない。いつどこで、どうしてこんな風になってしまったのか分からない。
「――理樹」
 鼓膜を震わせる低い囁きに、背筋がゾクリと粟立った。
 たったそれだけの事で、全身から力が抜けていく。
「イイコだ…」
「っ…」
 足を持ち上げられて――僕は慌てて恭介の胸を押し返した。
「待っ…」
「本当に待って欲しかったら、もう少しマシな抵抗でもしてみろ。理樹」
 力無い僕の両手は、すぐに捉えられて、シーツに縫い止められる。
「嫌だっ…きょう、すけっ…」
 拒絶の為に上げた声なのに、それは掠れて――甘く空気に溶けた。
「どうした…理樹」
 もう終わりか?と揶揄するように落とされる声。
 恭介の手が、僕の膝を強引に割り開く。足首を掴まれて、高く持ち上げられた。
 あまりの格好に泣きたくなる。快楽に溺れた身体を、恭介に見つめられる…!
「み、見ないでよっ…!」
「へぇ…見るなってか」
 クッと喉の奥で恭介が笑う。
「やめて、じゃないんだな」
「っ!」
 息を呑んだ僕に、恭介は満足そうに口付けた。
 軟体動物のように動きまわる舌。濡れた音が耳を侵していく。
 何度も何度も角度を変えて口付けられて、知らず知らず夢中になる。
「ん……ぅ、んむ…」
 最後にちゅっと音を立てて離れていく恭介の唇を、思わず目で追ってしまう。
 恭介は、切れ長の瞳を細めて僕を見下ろした。
「――ヤラしいな、お前」
「なっ…」
 抗議しようと思ったけれど、その前に恭介の指が、後ろに触れた。
 指の入り込む感覚に身が竦む。
「っ…!」
 息を詰める。
 痛い、だけなら―――まだ良かった。
「ん…あぁっ……!」
 噛み締めた唇から嬌声が漏れた。恭介の指がほぐすように蠢いて、体内を探っていく。
「ぃやっ…だ…!」
「何が嫌なんだ、理樹」
「……っん…」
「言ってくれなきゃ分からないだろ…?」
 甘く優しい恭介の声。
 なのに、それとは裏腹に、体内を蹂躙する指は激しさを増していく。
「気持ちイイ、だろ?ほら……ここ」
「ァっ…!」
 ぐっと一点を抉られて、全身が強張る。背筋を走る快感に、目の前が白くなった。
「こら……まだイクな。もう少し我慢しろよ」
 呆れたように恭介が指を引き抜く。そして、ひどく嬉しそうに僕の耳元に唇を寄せた。
「まだまだこれから、だろ?」
 囁きと同時に、腰を持ち上げられる。一気に身体を貫かれた。
「っ――!」
 痛みと紙一重の快感。目尻から涙が零れ落ちる。
 恭介の唇が、それを吸い取っていく。
 ――愛されているのかと錯覚するほど、それは優しかった。
 そんな訳も、ないのに。
「――理樹」
「ん…う、ぁ」
 容赦なく打ち込まれる楔。
 下肢から聞こえる濡れた音と、ベットの悲鳴がシンクロする。
 薄く開いた僕の目に、恭介の顔が映る。僕だけを見つめる――狂った、男の…顔が。
 快楽と恐怖が背筋を駆け上る。
「やっ……助けて…きょうすけっ…!」
 それでも、僕が呼んだのは目の前の人の名で――恭介は、目を細めて微笑んだ。
「可愛いな、理樹」
 強く体内を穿たれて、瞼の裏に火花が散る。途端恐怖は消し飛んで、目の前の焼け付くような感覚だけで埋め尽くされる。
「ホント可愛いよ、お前は」
 恭介の手が、僕のものを握り締めた。
 前と後ろを責められて、一気に快感が膨れ上がる。
「あ、ああっァ!」
「いいぜ、ほら――イケよ」
「ぁ――っ!」
 恭介の言うままに、達していた。
 その瞬間の顔も、精を吐き出す瞬間も…全部恭介に見られながら。
 涙がこぼれた。
 羞恥なのか――恐怖なのか。
「も、いやだっ…」
 もう、嫌だよ恭介。こんなの僕じゃない。僕の知らないうちに身体が勝手に変っていく気がする。
「恭介…怖いよ…」
「よしよし…大丈夫だ」
「助けてよっ…」
 ――逃げたいよっ…!
 泣きながら訴えた僕に、恭介は、そっと優しく啄ばむ様に口付けて。

「ダメだ、理樹…。――逃がさない」

 蕩けるような声で、宣告した―――。

 
 
 
 
 

あとがき
あとがき
 すんません単なるエロですっスルーしてくださいっ!何か恭介の声がエロいなーっという妄想からですっ…。

 拍手を下さった全ての方へ……って捧げるのがBADのエロかい!!(セルフ突っ込み)ドン引きした方…すみません…!
 いえ、あんまりぱちぱちが嬉しくて、変な方向へ脳内の筋肉さん(主に黒恭筋とエロ恭筋)がこむらがえって奇行に走りました…。
 明日には正常に戻ります…。あ、でもその内もう一品…(爆)

<<BACK △topページに戻る。△