宴会場が十二時までという事で、急遽酒飲み大会は中断。
鈴と来ヶ谷さん、僕、恭介の四人で、皆を部屋まで運ぶ事になった。
どうにか無事に女性陣を先に運んで、残るは真人と謙吾。
流石に鈴と来ヶ谷さんに手伝ってもらうのは忍びなくて、二人を先に部屋に戻らせた。
ちょっと心配だったけど、途中から来ヶ谷さんの足もとが段々ふらつきだしていたから、そんなに危険はないと思う。
鈴の運動能力なら、あの状態の来ヶ谷さんに負ける事はないだろうし。
その後、僕と恭介で、真人と謙吾を一人づつ部屋に連れて行った。
因みに、新婚旅行とはいうけれど、突然増えた人数のせいで、男四人は同室だったりする。
その辺は仕方ない。これはこれで修学旅行みたいで、楽しいしね。
畳の部屋にはすでに蒲団が四組敷いてあった。それぞれ謙吾と真人を寝かせて、僕らはほっと一息つく。
「大丈夫か、理樹」
「ん。ていうか、恭介の方こそ大丈夫?お酒相当飲んでたけど…」
「俺はまだまだ平気だぜ」
顔色も変えず得意そうな恭介に、呆れつつも感心してしまう。
「凄いね、恭介」
「そっか?」
「僕なんか、一口で酔いそうだったのに」
「ま、慣れだ慣れ」
「いやいや、その年で慣れとかおかしいからね?」
車の免許は持ってても、まだ未成年だからっ!
さて、と…そろそろ寝ないとね。
時計が十二時を過ぎて流石に眠くなってくる。
「恭介、そろそろ寝る?」
「そうだな」
僕らの前には、二組の布団。や、謙吾と真人も一緒の部屋だし、流石に一つの布団っていうのもね…。
と思ってたら、恭介が二つの布団をくっ付ける。
「え、ちょっ…恭介?」
「ん?どうした、理樹」
「いやいやいや、何してるのさ」
「布団くっつけてるだけだが」
「……何で?」
「一枚に二人で寝るより、二枚で寝た方が広いだろ」
えーと…つまり、一緒に寝る事が前提なんだ…。…う、うーん…嫌な訳じゃもちろんないけど…。
色々マズイ状況が頭に浮かんでしまう。
「ほら、理樹。来いよ」
ぽんぽん、と枕を叩く恭介の笑顔は爽やかで――なんだか、邪な想像をした自分が逆に恥ずかしくなった。
そうだよね。恭介だって、流石に二人がいるところで何かしたりはしないよね。
「うん、じゃぁ…電気、消すよ」
入口のスイッチをパチリと切ると、部屋の中が暗くなる。窓から射す月明かりを頼りに、歩く。
なんだか、本当にリトルバスターズ修学旅行の時みたいだ。
辿り着いた恭介の隣に、潜り込む。
布団に入った途端、そっと後ろから抱き締められた。
触れあった肌が熱い。項に恭介の吐息が掛かって。
「あ、の…恭介…?」
「理樹――」
浴衣の合わせ目に、恭介の手が――。
「ちょっ…きょうすけっ…!?」
小声で、だけど思わず咎めるような声が出る。だって…お酒で潰れてるとはいえ、真人と謙吾も同室なんだよっ…!?
恭介は、一度動きを止めてから、僕の耳元へ唇を寄せる。
「…ちょっとだけ、な?」
ちょっとって…いやいやいや!?
「待ってってば…」
「理樹」
「――ぁっ」
耳を食まれて、身体から力が抜けそうになる。浴衣の襟に、再び恭介の手が伸びて来る。
「っ…」
合わせ目から入り込んできた指は、思ったよりずっと熱い。項に押しあてられる唇も何だか熱かった。
これって――僕の身体が冷えてるわけじゃないよね…?
もしかして恭介…すごい酔ってる!?
宴会場で僕の鼻はすっかり麻痺してしまって、お酒の匂いは分からない。
起きてる時は普通そうに見えたから、酔ってないと思ったけど…来ヶ谷さんがふらふらになる位の量を、恭介も飲んだわけで。
「恭介…酔ってない?」
「酔ってないぜ?」
「でもさ、結構飲んで――」
「酔ってないって」
「えと、でも…」
「俺は酔ってない」
えーと。
どう考えても酔ってる人の発言だからさ!?
「あ、あのさ…」
「理樹」
少し強く名前を呼ばれて、僕は思わず黙ってしまう。恭介は僕の頭を撫でてくれた。
「よしよし…いい子だなぁ、理樹は」
「んっ…」
後ろから襟の合わせ目に差し入れられたもう片方の手が、浴衣の中を動き回る。
胸の尖りを押しつぶされて、思わず声が出そうになった。慌てて唇を噛み締める。
ちょっとだけ…ちょっとだけだもんね?
恭介の手が胸元から抜き取られ、僕の下肢へ移動する。浴衣の裾を割って、手が――!
「っ!」
そのまま裾を捲られて、蒲団の中で片足が剥き出しになる。足の間に、恭介の膝が後ろから割り込んできて、直接肌と肌が触れ合う。
太腿を撫で上げた手が下着に掛かるのを感じて、慌てて逃げようとしたけれど…。
「こら…。逃げるなよ、理樹」
抱き締める腕は、けしてきつくはないのに強固で、逃げられない。下着が――下げられる。
そのまま器用に脱がされて、無防備になったそこへ、恭介の手が直に触れた。
「っ…恭介…!」
「ん?」
「ちょっとだけって…!」
「――ああ。ちょっとだけだ」
笑みを孕んだ声音。言ってる事とは逆に、恭介の手は僕の身体を翻弄していく。
「ぁ…っ!」
上下に擦られて、思わず声が漏れそうになる。慌てて両手で口を塞いだ。
部屋の中には真人と謙吾がいる。間違って声なんか聞かれたらっ…!
「んっ…う…!」
項や耳の後ろを、恭介の唇が這う。
「気持ちいいか?理樹」
「っ…ん、ふ…ぅっ…」
「…声、出せよ」
なっ…!?
口を両手で押さえたまま、首を横に振る。
聞こえたらどうするんだよっ…!
「理樹」
「ん…だ、めっ…」
「聞きたい、お前の声…」
「や、め…っ」
恭介の手に強く扱かれて、身体は勝手にどんどん熱くなる。気がつけば、恭介の熱さも気にならないぐらいになっていた。
どこが感じるかとか、全部知っていて、恭介は弱い所ばかり責めてくる。
「は、ふ…」
「ほら、もう…ぬるぬるになってるの分かるだろ…いい加減声出せって…」
「んんっ……うっ…」
絶対やだ!
きつく眼を瞑って頭を振る。恭介が苦笑する気配。
「じゃあ――指、入れるからな?」
「っ!」
何、言ってるんだよ…駄目だよっ…やだ!
大きく首を左右に振ったけど。
恭介は、宥めるように太腿を何度か撫でて、腰の辺りに纏わりつく浴衣を、ゆっくり剥いでいく。
それから――蜜で濡れた指が、後ろに触れて。
「く、んっ…!」
体内に入り込む感覚に、全身が総毛立つ。中を探られて。
だめっ…や、――めてっ…声が…!
「――ココ、だよな…」
「やっぅ…!」
感じる所を抉られて、悲鳴が漏れる。指を蠢かしながら、恭介が耳朶に口付けてくる。
「イイ声じゃないか…な、もっと聞かせろよ」
「っ…ん、ぅ…!」
声出せないの知ってて、何でこんな意地悪っ…!
「きょうすけっ…」
「どうした」
「真人とっ…けんご、が…っ…」
「?…なんでこんな時にあいつらの名前なんか出すんだよ…」
え――?
ちょっと不機嫌そうな声に、他意は見当たらない。
もしかして恭介、真人と謙吾が同じ部屋にいること忘れてる!?
ほ…ほんとに酔っぱらってるよ…!
マズイっこのままだと本気でっ――。
「ひどいな、理樹…。こういう時は、俺の事だけ考えてりゃいいんだよ」
言い様、中に入れられた指の動きが、激しさを増す。奥を掻き回されて、耐えきれずに喘いでいた。
塞いだはずの両手の隙間から、声が漏れる。
だって…こんなにされたらっ…!
「前も後ろも、もうトロトロだな…」
「んっ…んん、ふ、ぁ」
「まだ声出さない気か。――けど、いつまで耐えきれるかな…?」
「っ…んぁ!」
不意に、ずるりと指を抜かれる。
そのまま身体をうつ伏せにされて、恭介が背中から圧し掛かってきた。
「――指じゃ足りないだろ?理樹…」
「っ…やめ…!」
熱くて硬いものが、お尻の辺りに押し付けられる。
腰を持ち上げられて、布団の上に膝を付く。尻だけを高く上げた格好で、足の付け根をしっかり掴まれた。
熱いものが、双丘の挟間をぬるりと撫でる。
そんなっ…だめっ…!
拒絶の言葉を吐き出す余裕もないまま、――ゆっくり、恭介が中に入ってきた。
「っ…あぁっ…!」
どうしようっ…声が…!
枕に顔を押し付ける。だけどっ…!
「んんっ…う、ぁっ…!」
身体を前後に揺すられて、勝手に声が口を突く。噛み締める事もできない。
熱い吐息と嬌声が溢れる。
「やっ…ぁ…あ、んっ…」
だ、め……気持ち、いっ…!
「理樹…すげぇイイ…」
「あう…!」
「理樹は、どうだ…?イイか…」
「…は、んっ…」
枕に顔を押しつけながら、必死で頷く。
奥を突かれて、抉られて――快楽を覚えこんだ身体が、戦慄く。そのまま身を任せそうになって、はっとなった。
駄目だよ、…もうやめてって、言わないと…!
「きょう、すけぇっ…!」
甘えるように、語尾が震える。
だめ、違うよっ…こんな声を出したいわけじゃなくてっ…。
「もっとか?理樹」
「ん…ぁ!」
ちがっ…やめっ――!
「っ…やっ…ひ、ぁ!」
恭介が腰を掴んで、強く打ちつけてくる。前にも手を伸ばして、蜜の溢れる僕のものを掴む。
そんな事されたらっ…!
噛み締めても噛み締めても、身体を揺すられるだけで喘ぎ声が溢れて、止まらない。
そんな激しくっ…しないでっ。
真人と謙吾に、聞かれちゃう…よ…!
お願いだからもうっ…。
「ん、く…あぁっ…きょうすけっ…」
「理樹――可愛い…」
耳元に唇が寄せられて。恭介の甘い声と、与えられる快楽に目が眩む。
目の前のシーツを手繰り寄せるように握り締めた。
どう――しよう……気持ちいいっ…!
目の前の快楽の事しか考えられなくなる。
「理樹――腰、動いてるぜ…?」
「は、…あう」
だって――気持ち、いっ……!
も、だめっ…。
「イきたかったらイってもいいぞ。――ほら…」
「ぁあっ…」
深くまで恭介が…!
だめ…だめ、もうっ…。
シーツを握り締める自分の指を、咄嗟に噛む。
「んんっぅ…んんん―――!」
噛み切ってしまそうな程指に歯を立てて――昇り詰めた快感にきつく目を瞑る。
シーツの上に吐き出しながら、身体がびくびくと震えてしまう。
「はっ……ぁ、う…」
「――まだだぜ、理樹」
くたりと弛緩した僕の身体を、猛ったままの恭介が突き上げる。
だらしなく開いた唇からは、最早声を殺す事も忘れて、嬌声が漏れていた――。
*
翌日、真人と謙吾が眼の下に隈を作っていたのは、二日酔いの具合悪さのせいだと信じたい…。
「ちょっとだけって言ったのに…!」
「その、…すまん…」
「昨日酔ってたよね?」
「ぶっちゃけ酔ってたな…」
「記憶は?」
尋ねた僕に、恭介はすまなそうな顔になる。
もしかして覚えてない…?何か腹は立つけど、それならその方がいいような…。
「悪い……声を押し殺してんの見たら、ものすげぇそそられた…」
「ばっ…馬鹿ーー!?」
しっかり覚えてるじゃないかっ!!
「マジで悪かったって!だからなっ…」
恭介は、少しだけ照れたように顔を赤くして、それから、不意に真面目な顔になって言った。
「また――今度は二人っきりで、行かないか?」
その言葉に……怒っていたはずの僕は、即座に頷いていた…。
あとがき
すいませっ…理樹視点のエロ…うおぉぉ単にそれだけだっ!?
えっと…ま、なんですか……酔ってたふりして、実は単に謙吾と真人に見せつけたかっただけに一票…(恭介…黒いな…)