「あのさ、恭介…」
「ん?」
「…楽しい…?」
尋ねた僕に、恭介はほんとに嬉しそう笑う。
「ああ。すっげぇ楽しい」
「――そう…」
うう…。僕何やってるんだろう…。
今僕が着ているのは、女子の制服。膝上丈のスカートがヒラヒラと頼りなく揺れる。
こんな事になった原因は…バトルだ。
敗者は勝者の言うことを、丸一日絶対に聞く事――そんな新ルールを導入した次の日。
早速僕は恭介に負けた。
恭介が女装を見たいと言い出し、来ヶ谷さんが制服を貸し――現在に至る。
…因みに、下着も勿論、全部女物に変えられた。
い、いい加減そんなにガン見するの止めて欲しいんだけど…。
「恭介、あの…そろそろ、着替えていいかな…」
「ダメ」
ええぇっ…!恭介の鬼、非道っ、人でなし!変態!
「理樹、お前今なんか思ったろ」
「い、いえ。全然…」
一応惚けてみる。すると恭介は愉快そうに目を細めた。
「駄目じゃないか、理樹。――嘘つく子には…お仕置きだよな?」
「は!?」
え、何その楽しそうな笑顔っ…!
「じゃ、理樹。罰として…スカート、持ち上げてみろ」
「…はぁ!?な、何言ってるのさ!やだよっ!」
「はい、”ブー”」
恭介が不正解音を通達してくる。
「敗者は勝者の言う事を絶対聞く。それが今回のルールだろ?命令違反一回、だ」
「それはっ…そう、だけど」
り、理不尽だ…!
思わず睨みつけたけど、恭介は何処吹く風だ。そして視線が、命令を強要してくる。
うう…な、何でこんな事…。
仕方なく、僕はスカートの端を摘んだ。
只でさえ短くて頼りないスカートが、更に頼りなさを増す。
震える手で、ゆっくりと端を持ち上げる。
恭介の視線が――捲れていくスカートに…。
何で僕がこんな恥ずかしい事しなきゃ駄目なんだよっ…恭介の馬鹿!
下着が見えそうなギリギリまで持ち上げて、それ以上は出来なくて、恭介を見る。
「こ、ここまでで…いい、よね?」
「じゃあ、そのままな」
非道な事を言って、恭介が近づいてくる。僕を抱き寄せて、軽くキスをした。
背中に回った手が背骨を伝い降りて――スカートの中に…!
「ちょっ…恭介っ…」
「どうした、理樹」
「いやいやいやっ…何やってるのさ!」
「いいだろ、別に」
いや良くないから!!
平然と触ってくる恭介に、その胸を思わずドンっ…両手で押し返した。
恭介の顔が、ちょっと不機嫌そうなものになる。
「理樹、二回目だ」
「え?」
「そのままって言っただろ」
手を離したせいで、元に戻ったスカートを指差す。
あ、そっか…。勝者の命令は絶対、だっけ…。で、でも今のは不可抗力だ…。
「三回目はないぜ?次命令違反やったら…そうだな、その格好で、自慰でもさせるぞ?」
うわ!?鬼!?や、本気じゃないと思うけどっ!
「わ、分かったよ…」
仕方なく、もう一度スカートを持ち上げた。
恭介は嬉しそうに、また僕にキスをする。
何でそんな喜んでるかな!?
そう思ったとき、恭介の手が再度スカートの中に差し入れられた。太ももを撫で回す。
「っ…」
直に肌に触れられて、ひゅっと息を呑む。
我慢、我慢だ…ここで動揺したら、きっと恭介の思う壺…。
「理樹。可愛い…」
「っ…ぁ…」
「このまま、…な?」
――って…。
ええぇぇこのままっ!?
「だだだだ駄目っ!!これ来ヶ谷さんのだしっ!よ、汚しちゃったら、どう…するの、さ……」
思わず恭介の腕から逃れて、はっとなる。
しまった…勝者の言う事は、絶対だった…。
恐る恐る目を上げると、恭介は――何故か笑顔だった。
「理樹」
「は、はい…」
「三回目、な?」
「うっ…!」
お、鬼だ…鬼がここにいるっ…!
「ど、どうする気…?」
「別に。俺はどうもしない」
「え?」
肩透かしを食らった気分で呆けると、恭介は笑みを絶やさないまま、僕に告げた。
「言ったろ。次やったら――自慰させるぞって」
う、そ――。まさか、本気…?
「じょ、冗談だよね…?」
「俺はマジだ」
言って、恭介はベットの端に腰掛ける。
「やってみろ、理樹」
そんなっ…!?
嘘だと思いたくて恭介を見つめてみたけど、恭介の態度は変わらない。
視線がやれと命じてくる。
「っ…わ、分かった、よ…」
逆らえなくて、僕は恭介と向かい合うように、床に座った。
羞恥に唇を噛み締めながら、少しだけ、閉じた太ももを開く。なるべく見えないように、スカートの下に、手を滑り込ませる。
「んっ…ふ…」
下着の上から触れて、思わず吐息が漏れた。恥ずかしさにそのまま固まる。
「理樹」
催促してくる恭介の声。
分かってるよっ……!
半ばヤケクソ気味に、ゆるく撫でた。途端甘い感覚が背筋を駆け上がる。
だけど、恭介の視線が気になって、指が震える。
恥ずかしい。早く終わらせたい。その一心で、どうにか手を動かす。
下着の上からの、じれったい快感。
無理、だよ…、このままじゃ、終わらない…。
それを見抜いたようにタイミングよく、恭介が言った。
「理樹、…下、脱いだ方がいいんじゃないか?」
「――それも、命令…?」
「…そういう事にしたいなら、命令でもいいぞ」
見透かされてるっ…!
一度唇を噛んで、それから、僕はそっと女物の下着に手を掛けた。
床に座ったまま、少しずつ引きずり下ろしていく。一度膝で止まった頼りない布切れから、膝を立ててどうにか足を引き抜いた。
向かい側の恭介の視線が、立てた膝――スカートの中に入り込む。
慌てて足を寝かせようとしたけど、その前に命令された。
「理樹、そのまま足…立ててろ」
「っ!」
「それから…そうだな、開いてみるか。俺に、よく見えるようにな?」
弧の形にしなる唇と、僕を眺める切れ長の瞳。
見られる…恭介に……!
「そ、んな事…!」
「よくグラビアとかであるだろ?…M字開脚」
「や、やだ…」
「――理樹」
「…っ…」
嫌なのに――僕の足は、恭介の命令通り動いていく。
立てた膝を、ゆっくり開いて――。
「やれば出来るじゃないか、理樹」
開いた足の間――身体の中心に、恭介の満足そうな視線が注がれる。
嘘…この状態で、するの…!?
許しを請うように、恭介を見上げた。だけど――やっぱり恭介の表情は変わらない。
やらないと…終わらないんだ…。
決意して、僕はそこに、震える指を伸ばす。
終わらなきゃ、早く…!
「ん…っぁ」
見られている羞恥とは別に、甘さが身体を走り抜ける。布を介さない刺激に、一気に身体が熱くなる。
そのまま目を瞑った。恭介のことを頭から追い出す。
ここには誰もいない、僕一人だ――そう思い込んで、直接手で握り締める。途端にぞくぞくと背筋が痺れた。
「はっ…ふ、ぁ…」
握って、上下に擦る。勝手に声が口を突く。何度かくリ返しただけで、硬くなって勃ち上がる。
どう、しよう…気持ち、いい…。
「んんっ…ぁ、あ…」
先走りが溢れて、指が濡れた。滑りの良くなったものを、更に扱く。
目を瞑ったまま、身体の中に灯った熱を追う。
上擦る呼吸。頭の芯がぼうっとして、熱くなる。肌が汗ばむ。夢うつつのような、感覚。
「あ…ぅ、…ん、あぁっ…」
「――気持ちイイか、理樹?」
「っ!」
唐突に掛けられた声に、急速に現実感が戻る。
思わず開いた目に、恭介の姿が映った。カッと全身が羞恥に赤くなった。
「やっ…」
「気持ち良さそうだな…」
「見、ないでよ…!」
「そんなになって…可愛いなぁ、理樹」
目を細めて、恭介が僕のそこを見る。そして、ギシっとベットから立ち上がった。
「手伝ってやろうか…?」
「恭介っ…!」
止める暇もなく、恭介は僕の身体を床に押し倒した。開いた足の間に、恭介の身体が入りこむ。
するりと制服のネクタイが抜かれ、上着のボタンを外される。
「っ…」
「――ほんと、可愛いな…理樹」
ブラウスの前を開かれて、露になった胸に、恭介のキスが落ちてくる。
「んっ」
胸の尖端を啄ばまれて息を詰める。
恭介の手がスカートの中に入り込む。既に起ち上がったものに指を絡めてきた。
「熱いな…」
「っ…」
「けど、こっちは自分で握ってろよ?」
恭介は、僕の手を取ってそこに触れさせる。恭介の指は、起ち上がる中心を過ぎて、後ろに――。
「こっちの方、手伝ってやるから」
「やめっ」
「今の、命令な?」
告げて、恭介の指が先走りを掬い取る。そして、
「っあぁ!」
入り込む指に一瞬身が竦む。けれど直ぐに……熱くなった。
「あ、っ…は、ぅ!」
「ほら、前はちゃんと自分で擦ってろ」
「んっ…んっあ!」
命じられるまま、手を動かす。
恭介は僕の感じる場所を分かってて、そこばかり指で刺激する。
「っ…あぁ…!」
気持ちっ…いっ…!
そんな事されたら、もう、――!
「やっ」
「嫌じゃないだろ」
「だ、めっ…!」
ホントに、駄目っ…。
「きょうすけっ…も、――っ!」
最後まで言えずに、僕は身体を強張らせた。自分の手の中に、精を吐き出す。
白濁液が飛び散って、制服と自分の胸を汚した。
頭がぼうっとなって…何も考えられない――。
弛緩した僕の身体から、恭介がズルリと指を引き抜く。
「――っ」
「理樹。…ここ、自分で開いてみろ」
恭介に導かれるまま、僕の手は、後ろに添えられる。
「…あ…」
そんな、事……。
そう思ったのに――。
「命令だ、――理樹」
その言葉に逆らえず、僕は、指で、自分の秘所を押し広げた。
恭介が、満足そうに笑って僕にキスをする。
「――いい子だ」
「あ――あぁっ…!」
開いた箇所に、恭介のものが押し当てられて。
快楽に堕ちきった身体は、悦んでそれを受けいれた――。
後日。
僕は決死の努力で皆を説得して回り、多数決によって、バトルの新ルールは廃止になった…。
あとがき
いちな様の女装理樹に禿げ萌えた結果の産物…。