未来へ続く路 -あしたへつづくみち- 5

 カチコチと時計の秒針が回る。やがて響く午後11時の時報。
 俺は、ぼんやりとテーブルに肘を着いたまま向かいの空席を眺め、深く溜息を吐いた。


         *


「新入生親睦会?」
「うん、明日の夜だって」
 理樹がご飯を盛りながら、俺に明日は遅くなると告げた。
 学部ごとに毎年行われる恒例行事らしい。
 企画自体は上がセッティングするようだが、実際の席には上級生がいる訳でもなく、気楽に学生同士の交流を図る事が目的なんだそうだ。
「そっか。楽しんで来いよ?」
「うん」
「あとはまぁ、大丈夫だとは思うが――男には気を付けろよ?」
「あはは、何さそれ。大丈夫だよ」
 理樹は笑って受け流す。いや、結構真面目に言ったんだが…。
 ま、大丈夫だとは思うけどな。教育学部に在籍しているのは何も理樹一人じゃない。
「鈴と真人も一緒なんだろ?」
「うん、二人も出るって言ってたよ」
 それぞれ科は違うが、理樹、鈴、真人の三人は同じ教育学部だ。当然真人は体育科だが。
 因みに、小毬と西園は文学部、三枝は薬科、能美は理学部の中でも宇宙工学科とかいう所で、、謙吾の奴は何故か経済学部、来ヶ谷は法医学部という話だ。
 学部でそれぞれ棟が違うから、授業で他の連中に会う事は滅多にないようだが、授業が終わるとキャンパスの一角で集まったりもしてるらしい。
 ま、取り敢えず鈴の事は小毬に頼んでおけば大丈夫だろう。会場には真人も理樹もいるし、もしかすると他の連中も紛れてるかもしれない。
 つーかぶっちゃけ仕事がなけりゃ俺も混じっておきたい所なんだがな。
 それから、楽しそうに大学での出来事を話す理樹と一緒に食卓を囲んで、二人で夕食を食べた。
 それが、昨夜の事だ。


 ――で、本日11時現在、理樹はその親睦会に参加しているわけだが。
 俺の方は思ったより仕事が早く上がって、帰宅したのは九時位だ。こんな事なら、やっぱ場所聞いときゃ良かったな。こっそり忍びこめたのに。
 いや、今からでも遅くないか。
 理樹を驚かせたいからな、鈴に――いや、あいつは下手するとメールを黙殺する可能性があるな。真人に聞いてみるか。
 そう思って携帯を取り出した途端、まるでタイミングを見計らったように携帯が鳴る。
 電話だ。相手は――理樹だった。すぐに通話ボタンを押す。
「理樹か?」
『あ、恭介?』
「どうした」
『えっと今日なんだけど、もう少ししたら――』
『おおっなになに直枝ちゃん誰に電話?もしもーし!ども工藤でーす!』
『ちょっ!返してよっ』
『もしもしー?え、つかマジ誰に電話?』
『い、一緒に住んでる人だよっいいから携帯返してよ』
『マジで!?直枝って同棲してんの!?』
『ど、同棲って…!』
『うっわ羨ましっ!どんな子だよどんな!もしもーし直枝ちゃんの彼女っすかー?』
『彼女じゃないよっそのっ…男だしっ』
『えーつまんねー。じゃ直枝って男と暮らしてんの?――うわ、お前その顔で男と一緒って、なんかヤバくね?』
『いやいやいや何でさっ顔とか関係ないしっ』
『でも俺直枝となら一緒に暮らしてー。そうだ俺と暮さない?』
『暮さないよっていうか携帯返してってば!』
 ……なんつーか、突っ込みスタンスは何処でも健在だな、理樹。しかし…大丈夫か、色々と。そしてこの場合俺はどうすべきだ。
 携帯から聞こえて来るざわめきは小さい。多分実際の会場からは離れた場所で電話してるんだろう。
 理樹が場を離れたのを見て、ちょっかいを掛けに誰かが追ってきたって所か。
 携帯を持ってるらしい奴と理樹との応酬がしばし続き、そこで不意に低い声が割って入った。
『おい。…直枝に返してやれ』
『っと。なんだ柏木ちゃんってば優しいねー』
『――酔ってるな、工藤。お前は席に戻ってろ。ほら、直枝』
『あ、ありがとう』
『…別に』
 無愛想な受け答えだが、――いい奴っぽいな。昔の謙吾と少し似ているような気もする。
『もしもし恭介?』
「ああ、大丈夫か?」
『うん、ごめんね。なんか途中から皆お酒入っちゃって…。もう少ししたら帰るから』
「迎えに行くぞ?」
『いいよ、大丈夫。みんなでお金出し合ってタクシーって話になってるからさ。じゃあ、また後で』
 そのまま携帯がぷつりと切れる。
 心配は心配だが、まぁ…大学生だしな。――いや、やっぱ心配だ。くそ、場所が分かればな。
 俺とした事が抜かったぜ。もう少し、か。今から場所を聞いても、下手をすれば行き違いになる。
 仕方なく、俺は理樹の帰りを待つ事にした。


         *


 玄関のチャイムが鳴ったのは、それから1時間後だった。
 理樹は家の鍵を持ってるはずだ。一体どうしたのかと玄関を開けると、そこにいたのは、理樹と、見知らぬ男が二人だった。
 茶髪の青年が俺の顔を見るなり、いきなり「負けたー!」と叫ぶ。
 いや、何の話かさっぱり分からんが。
 理樹は、なぜかもう一人の黒髪に支えられるように立ったまま、動かない。
「――理樹?」
「きょ、すけぇ…?」
 顔をあげた理樹は、とろんとした視線を俺に向ける。
 ――どう考えても酔ってる顔だった。…飲んだのか。
 理樹を片腕で支えた黒髪の青年が、申し訳なさそうに俺を見る。
「直枝が席を立ってる間に、誰かが飲み物をすり替えたらしくて…未成年なのに申し訳ない。グラスに一杯程度なんだが」
「いや、こっちこそ理樹が世話になったな。…理樹。ほら、こっち来い」
 手を差し伸べた途端、理樹はぱっと笑って俺に胸に飛び込んできた。ったく、心配掛けやがって。
 頭を撫でてやって、ふと前を見ると、玄関先で二人の青年が突っ立ったまま俺達を凝視していた。
 何だ?ああ、そういやタクシー代がどうのって言ってたしな。この様子じゃ理樹は出せてないだろうし。
「ちょっと待っててくれ」
 理樹の靴を脱がせて、面倒だったからそのまま横抱きに部屋の中に連れていく。ソファに寝かせてから、財布を持って玄関へ出た。
「理樹も送ってもらったからな。これで間に合うか?」
 さらば諭吉。
 差し出すと黒髪の方は遠慮したが、茶髪の方はラッキーと喜んで素直に持っていった。
 二人を帰して、俺はすぐに理樹の様子を見に居間へ取って返す。
 理樹はソファの上で、くったりと力なく寝そべったままだ。
「理樹。――水飲めるか?」
「ん…」
 小さく頷くのを見て、キッチンから水を持ってくる。
 背中を支えて少し起こしてやって、理樹の唇にグラスを当てて傾けてやる。
 薄く開いた唇が水を吸い込んでいく。
「具合どうだ?気持ち悪いか?」
「んーん…なんかふわふわしてる」
 言って、理樹はぽやりと笑う。
 まあ、そんなに大量に飲んだってわけでもないようだし、単に多少酔ってるだけなら問題ないか。
「きょうすけぇ…」
「どうした?理樹」
「…きょうすけ」
 力ない手が伸びてきて、俺の首に巻きつく。幸せそうな顔で、理樹が擦り寄ってくる。
 アルコールの匂いと、理樹の匂い。
 舌足らずな声に名前を呼ばれて、一瞬、来ヶ谷の口癖が脳裏に浮かぶ。
 なるほど…まさに”やっちゃっていいのか?”って状況だな…。
 いや待て、今の理樹は酔っ払いだ。酔ってる状態で…ってのは流石にマズいだろ。
 大体、理樹だって別にそういう気で抱きついてきてる訳じゃない。
 わざとらしく咳払いをして、俺は理樹の肩を掴んでゆっくり身体を離す。
 ここはアレだ、俺の鉄壁の理性で乗り切るしかないな。
「理樹。水飲んだら横になってた方がいい。ベットまで歩けるか?」
「ん…」
 頷いた理樹は立ち上がろうとしたものの、すぐにくたりと床に崩れそうになる。
 その身体を支えてやって、俺は理樹をベットへと連れて行く。
「大丈夫か?」
 そっとシーツの上に載せてやると、理樹がまた俺に腕を伸ばしてしがみ付く。
「ねるの?」
「ああ、そうだ。寝る」
「べっとで、するの?」
「ん?」
「いっぱい、する?」
「――」
 だからだな、マズいと…。
 つーかそんな潤んだ瞳で見上げるな。舌足らずにしゃべるな。くそっ唇とか濡れててめちゃくちゃエロいだろ。
 そんな顔で――。
「きょうすけ…大好き…」

 ――悪ぃ、理樹。
 俺の理性、大した事ないな…。


          *


「んっ…あ、あっ…」
 理樹が眉根を寄せて、切なげに声を上げる。シーツの上で、理樹の腰が淫らにうねる。
 俺の指を食む、狭くきつい肉襞。
 中を擦りあげてやるたび、理樹は浅い呼吸で仰け反る。汗の滲む背中を抱き寄せて、引き起こした理樹の身体を膝の上に載せてやる。
 向い合せに抱き合いながら、快楽に蕩ける表情を覗き込む。背骨を下へ辿って、辿り着いた入口に再度指を埋め込んだ。
 ゆっくり動かすと、腕の中に収まる細い身体が焦れたように身動ろぐ。
「ふ、ぁっ」
「イイか?理樹」
「は、くっ――…イっ…」
 いつも以上に上気した頬と、その熱で潤む瞳が強請る様に俺を見上げてくる。
 縋りついてくる指先まで熱い。
「もっ…ほ、しぃ…」
「――何が、欲しいって?」
 意地悪く耳元でそう返せば、理樹は俺の腕に縋っていた手を下へ降ろしていった。
 っと、いつになく積極的だな…。
 俺の下肢に理樹の手が触れる。すでにそそり立っていたモノへと触れると、理樹はまるで期待するように吐息した。
 そっと握ってくる指に思わず息を飲む。
「――っ…理樹」
「こ、れ…ほし、っ…」
 理樹が、胸元にすり寄ってくる。
 …くそ、可愛いな…。
「そんなに欲しいか?」
「ん…」
 素直に理樹が頷く。俺はゆっくり指を抜いてから、本数を増やしてもう一度奥に押し込んだ。ぎちゅ、とやらしい音がする。
「あ、ぁァっ!?」
 びくびくと理樹が震える。内股の筋が引き攣って、俺の膝の上に乗った太腿が、脚を締め付けてくる。
 とろとろと蜜の溢れる前へも指を絡めてやれば、理樹は泣きそうな表情で悲鳴を上げた。
「ひ、やっ…――も、イっちゃ……」
「おっと。…こら、こいつが欲しいんじゃなかったか?」
 ちょっと焦らし過ぎたか。
 苦笑して指を引き抜き、理樹の手に俺のモノを握らせる。理樹は短く息継ぎしながら、あまり力の入らないらしい上体を、どうにか起こした。
「ほら、理樹。――自分で入れてみろ」
「じ、ぶんで…?」
「ああ。支えててやるから……出来るだろ?」
「う、ん…」
 理樹はとろりと蕩けた表情で頷く。
 枕を背凭れに代りに少しばかり寝そべった俺の上へと、理樹を乗せる。
 腰を支えるように手を当ててやりながら、脚を開かせ跨がせる。
「ほら、ここに――欲しいんだろ?」
 双丘を掴んで割広げ、曝け出された入口を指でつつく。
 理樹は唇を噛みしめながら、物欲しげに俺を見た。
「ゆっくり腰下ろしてみろ」
「ん、あ――でき、なっ…」
 力の入らない身体で中途半端な膝立ちが辛いのか、理樹は泣きそうに訴える。
 それでも、少しづつシーツの上を膝が滑って、理樹の脚が開いていくごとに、腰も落ちていく。
「きょう、すけっ…もっ…」
「もう少しだ――ほら」
 物欲しげに収斂するそこへ、硬い先端をぬるりと擦りつける。
「っぁ…!」
 ビクリと震える腰を、しっかりと支えてやる。
「理樹、自分でちゃんと掴んで、入れてみろ」
「は、うっ…」
 言われるままに、理樹の手が俺の幹を掴んでそれからまた少しだけ膝がシーツの上を滑る。
「ん、んんっ――く、ぅあ…!」
「っ…!」
 入口をぬるぬると滑っていた先端が、不意にぢゅぷりと飲み込まれた。
 くっ…きついな…。
 支えていた理樹の腰がびくびくと慄く。
「はっ…う…」
「理樹、――ゆっくり、な」
「ん、うっく……っ」
 眼尻に涙を滲ませた理樹が、忙しなく息を継ぎながらゆっくり腰を下ろしていく。
 こいつは――中々絶景だ。俺のモノがゆっくり理樹の中に飲み込まれていく。思わず目を細めてそこを凝視した。
 やがて腰を下ろしきった理樹が、満足そうに吐息する。
「――は、あ…」
「なんだ、入れただけで満足か?…違うよな」
「え、あっ…アァっ…!?」
 下から突き上げてやれば、理樹の身体が躍る。濡れた肉と肉の擦れ合う淫らな音。
 部屋に満ちる荒い呼吸。規則的に繰り返されるベットのスプリングの悲鳴。
「はっん――あぁっ…!」
 甘い嬌声をあげて仰け反る華奢な身体。
 不安定に揺れる理樹の腰を掴んで、乱暴に楔を打ち込む。絡みつくような媚肉に、理性が飛ぶ。
 我慢できずに体勢を入れ替えた。
 上に乗っていた理樹の身体を、強引に後ろへ押し倒し、シーツに肩を縫い付ける。
「ひ、――くっ」
「理樹っ…」
 抜けかけたモノを、今度は上から圧し掛かる様にして突き入れる。
 理樹の腕が差し出され、俺の背中へと回る。しがみ付いてくる小さな手に目眩がする程の欲望を覚えた。
「も、っ…きょうすけっ……!」
 理樹が限界を告げる。
 震えながら蜜を零す前に手を添えて、突き入れるタイミングと合わせるように扱いてやると、理樹は数度で弾ける。
「あ、…イ…っっ――!」
 びくびくと全身を震わせながら、俺の手の中に吐き出される熱。
 浅く呼吸しながら、理樹は快感の余韻に浸るように目を瞑る。そのまま眠ってしまいそうな身体を、だが俺は無情に突き上げた。
「んっく…!」
「悪いな、理樹。まだ終わってないんだ」
「――あ、アァっ…!」
 甘く熟れた悲鳴を堪能しながら、俺は熱い内部を存分に蹂躙した。


 
 
 
 
 

あとがき
 ぶっちゃけ、理樹をヤッてる時の恭介は俺だと思う(えっ!)。まぁ、酔ってる理樹にむにゃむにゃな事は一度やってみたかったんだ…。
 理樹は酔うと積極的にエロい子になっちゃうといいっ(よくない)。いや、普段が割に抵抗するので、たまにはね、と…。
 オリキャラ増殖。工藤君と柏木君。誰ですかあんたらは。話の展開的に色々ゴタゴタなるかな。そしてアレだ、基本みんな理樹スキー。
 で、ほんとは確定したくなかったんですが何となく学部を決めてみたり。謙吾がね、ほんとになぜだお前(をい)

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