君と僕の軌跡・番外編・聖夜の恋人達(中編)

 12月24日。
「クリスマスイブ、か…」
 カレンダーの日付を眺めながら、俺は溜息を吐く。誰も見てないんだから、たまにはいいだろ。
 ああチクショウ。イブに仕事かよ。もう一月も理樹と会ってない。…まぁ、ある意味自業自得というか、仕事ばかりのせいでもないんだが。
 とは言え、どうにか明日明後日は代休予定だ。
 明日の朝に向こうに着けるようにと逆算して、仕事を切り上げる時間を考える。そろそろ電車は最終だ。
 一段落したし、この辺でいいか。これなら一度家に帰って、二時間くらい眠れるな。
 机の上の書類を片付け、パソコンの電源を落とす。
 明日の予定が空いてるか理樹に電話して――。
「棗君、今帰り?」
 突然声を掛けられて振り向く。同期で入った事務の女子社員だ。それほど親しい訳でもないが、そこそこ面識はある。
 仕方ない、電話は家に戻ってからでいいか――そう思って携帯を鞄にしまう。
 寒くなっただとか、仕事はどうのと当たり障りのない会話をしながら、会社を出る。駅へ向かって、そこで別れる――はずだったのだが。
 なぜか彼女は切符を買って、ホームで俺の隣に並ぶ。定期じゃないって事は、当然彼女の通勤用の電車じゃない訳だ。
 何でわざわざ…。
「棗君。イブの予定は?」
「帰って寝る、だな」
「恋人さんはどうしたの?」
「明日会いに行くさ」
 俺の正直な回答に、彼女は妙に嬉しそうな顔になる。
 一体何だ?同じ車両に乗り込んで、ひたすら話しかけてくるから、一応相槌を打っておく。
 駅に着いて電車を降りても、まだ彼女は俺の傍を離れない。
「なぁ、お前の家どこだ?こっちじゃないだろ」
 ま、この時間だし雪まで降ってるしな。家に着けば車があるから送って行ってやるか、仕方ない。
「棗君の家は?」
「俺か?すぐそこだが」
「部屋、見たいな」
「悪ぃ。散らかりまくってんだ」
「掃除してあげよっか」
「それは俺の恋人の専売特許だからな。他の奴にはやらせられない」
 そう言った途端、彼女はおかしそうに笑い出す。胡乱げに見遣ると、彼女は得意そうな顔で告げた。
「ホントはそんな人、いないでしょ」
「――いるさ」
 答えながら、なるほどそういう事かと瞬時に理解する。
 俺は最初の歓迎会で、恋人がいる事をバラしている。名前や性別は言ってないが、土日はよくデートでこっちにはいないし、恋人の件は周知の事実になってるはずだ。
 にも関わらず、ここまで断言できたという事は―――おそらく、俺の携帯の履歴でもこっそり覗いたんだろう。
 ほとんど理樹ばかりだが、彼女はそれを”恋人”とは認識しなかったらしい。
 まぁ…いわゆる”彼女”じゃないからな。
 で、自信満々で俺の家まで着いてきた、って所か。困ったな。理樹に電話して、さっさと寝たいんだが。
 すり寄って来る腕を器用にかわしながら、さてどうしようかと思案する。
 面識があるだけにやりにくい。この手のタイプは、幾ら口で恋人がいると言っても納得しそうにないしな…。
 今目の前に理樹がいれば、何の説明もいらないんだが…。
 ――今、理樹がいれば……。
 ふ、と思考が埒もない妄想に流れる。
 だってイブだぜ?なのになんで隣にいるのが理樹じゃないんだよ。
 もし今目の前に理樹がいたら…即抱き締める。
 抱き締めて、キスして、首にも痕を付けて、白い肌を暴いて、それから――…何だ、欲求不満か俺は?
 もう一月も会ってない。キスしてない。触れてない。――抱いてない。
 ああ、そりゃ欲求不満にもなるか。
 隣で囀る高い声。
 理樹の声が聞きたい。もう夜中だからメールにしようかとも考えてたんだが、…やっぱり電話にしよう。
 …そうだな、電話で話しながらスルってのも、有りか。…ヤバいな。明日まで待てば会えるってのに。
 ――ああ、クソっ…!マジで欲求不満だ。
 会いたい…会って抱き締めたい――理樹…。
 そんな事ばかり考えていたら、あっという間にアパートの前にいた。
 隣から期待に満ちた目が見上げてくる。
 しまった…忘れてた……。
 さて――穏便に済ますにはどうするかな。あんまりバッサリ切るのは上策じゃない。一応会社の人間関係だ。
 どう捌くか…。
「悪いな。ほんと部屋には上げられないんだ」
「イブに一人なんて寂しくない?」
「これから大事な奴に電話して、思う存分慰めて貰うさ」
「電話より…本物の方がいいでしょ」
 何を勘違いしたのか、彼女が身体を寄せてくる。
 そりゃ俺だって本物の方がいいさ。――本物の理樹がな。
「――悪いが、マジで帰ってくれないか?」
 苛ついた声が出る。一瞬面喰らったようだが、彼女はそれでもまだ俺の後をついて階段を上って来る。
「ね、喉乾いちゃった。何か飲ませて」
 ……食い下がるな、こいつも。
 だったらここは彼女の要望通り、ホントに水でも出してやろうか。もちろん外で待たせてな。それで怒って帰るなら、まだ人間的にはマシな部類なんだがな。
 下手に車で送ろうものならどんな勘違いをされるか分からないからな、どうしても引き下がらないなら、タクシーを呼んで無理矢理詰め込むか。
 そんな算段を練りながら、階段を上がりきった所でポケットに手を入れる。
 鍵を取り出し、視線を上げたその先に……理樹が、――いた。
 大きな黒瞳はどこか怯えたような色を含んでいて。
 けれど、その表情の意味を推し量る余裕なんかなかった。
 部屋までの短い距離を走って――。
 
「何でいるんだっ…!」
 
 震える理樹を、俺はきつく抱きしめた。
 ああ、本当にいる。本物だ。凄い冷たくなってるじゃないか。一体いつからいたんだよ。
 力の加減なんか出来ずに目一杯抱き締める。
「理樹っ…」
「きょ、恭介っ…ひ、人がっ…!」
 耳元で、慌てたような小さな声。俺の肩を押し戻そうとする理樹の手を逆に掴んで、ドアに押し付ける。
 びくりと見開かれる瞳に構わず、問答無用で口付けた。
「んっ…んんぅっ…!」
 冷え切った唇を熱く塞ぐ。
 背後で、ひどく動揺しているような気配がして――ハイヒールの足音が走り去っていく。
「んっんっ……は、ぁ…恭介っ、今の人…!」
「会社の同僚だ。勝手に付いてきた」
「会社っ…!?どうするのさっ!見られ――んんっ」
「黙ってろ」
 角度を変えて、何度も唇を重ね合わせる。慄く小さな舌を吸い上げ、擦り合わせる。
 舌と舌の絡み合う濡れた音に、理樹が震える。
 口付けたまま、手にしていた鍵をドアノブに差し込んで扉を開いた。部屋の中に華奢な身体を押し込んで、後ろ手に再び鍵を閉める。
 抱き締めてキスをして―――靴を脱ぐのももどかしく、俺は玄関先で理樹の身体を床に組敷いた。
 吐息まで奪うように口を塞いで、慌ただしくコートのボタンを外す。俺も外套を脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながら、理樹の上に覆い被さった。
「…んっ…ぅ…は、待っ…っ」
「こんなに冷えて、何時間待ってたんだよ…!」
「だって……ん、…あ、いたくてっ…!」
 その言葉に一層愛しさが募る。
 俺だって、会いたかった――。
「理樹っ…」
「っ…あ…!」
 首筋に唇を這わせ、きつく吸い上げる。コートを脱がせ、服を肌蹴させる。露わになる白い肌。
 一月も触れていなかった――理樹の身体。
 眩暈がする程の本能的な欲求に、俺は忠実に従った。
 理樹が怯えたように震えたが、構わずその身体を貪る。肌を舐めて、噛んで、吸い上げる。
「ひっ…ぁ…!恭介っ…」
 戸惑うような、咎めるような理樹の声。
「待ってよっ、いきなりこんな……んっ!」
 抗議の言葉を吐き出す口を、無理矢理塞ぐ。逃げ惑う舌を捉えて絡み合わせてやれば、理樹が身じろいだ。
「んんっ……恭介っ」
「悪いな、話なら後で幾らでも聞いてやるから」
 自分でもがっついているとは思ったが、こればかりはどうしようもない。
 目の前にいないならまだしも、理樹本人を前にしたら――我慢するなんて無理だ。
「理樹…」
「きょう、すけ…」
 ああチクショウ。マジで可愛い。
 冷えた身体を温めるように擦ってやりながら、俺と理樹の、二人分のベルトを外す。
 下着ごと理樹のズボンを引き下げて、剥き出しになった部分を手で掴む。
 既に熱く芯を持っていたそこに、思わず笑みが浮かんだ。
「お前も、もう感じてるな」
「それは…恭介がっ…!」
「ん?俺のせいか。だったら――責任取らなきゃな」
「っ…は、うっ…」
 強弱をつけて扱いてやると、理樹の背が反り返る。赤く染まっていく肌。
 薄暗い玄関先で、理樹の身体を暴いていく。
 恥らうように、理樹が膝をすり合せようとする。足首を掴んでそれを阻み、逆に広げてやると、泣きそうな顔が俺を見上げた。
 それはやけに扇情的で…。
「理樹…そんな顔するな」
「え…」
「我慢出来なくなるだろ…」
 今だってギリギリ耐えてるってのに――。無意識なのが尚悪い。
 口付けて舌を絡めとりながら、掴んでいた理樹のものを乱暴に扱いた。
 びくびくと腕の中の身体を震え、直ぐに先走りが滲み出す。蜜の溢れる先端を指先で擽ってやりながら、強引に快感を引き出していく。
「あぅっ…ふ、く…」
「イイか?理樹」
「んっ……きょうすけっ…」
 理樹が、震える手を俺のスラックスへ伸ばしてくる。
「恭介、も…」
 たどたどしく指がボタンを外し、躊躇いがちにジッパーを下げていく。
 小さな手がおそるおそる中に差し入れられ――直ぐに怯えたように、理樹はその手を引っ込めた。
「どうした」
「恭介の……か、たい…」
「そりゃあな。――お前もだろ。…ほら」
「やっ…ん、ぁっ」
「――次は、こっちだ…」
 濡れた指を、双丘の狭間に滑り込ませ、閉じた襞を指で押し開く。
「んっく…!」
「――きついな」
 跳ねる身体を宥めるように撫でて、指を奥へ埋めていく。
「あぅ…っ…きょう、すけぇ…」
 俺の指を銜え込んで喘ぐ理樹の姿に、ゾクリと情欲が駆け上がった。
「理樹…」
「は、あ…んっ…」
「こら…これ以上、煽るな」
 ――ムチャクチャにしちまいそうだ…。
 暴れだしそうな衝動に耐えながら、、襞を掻き分けて指を侵入させる。やがて触れたしこりを、強く抉る。
 途端、理樹が高く嬌声を上げた。
「あぁっ…やっ…!」
 俺の目の前で、とろりと先端が蜜を溢れさせる。
 指を増やして狭い入口を解してやりながら、噛みつくように理樹にキスをする。
「んんっ…ぅ…」
 さっきまで逃げていた舌が、素直に差し出される。指を食む秘所がひくついて、その情景に耐えきれなくなった。
 自分のものを取りだして、指を引き抜く。
「理樹…すまん、マジで余裕がない」
「きょうすけっ…」
「入れるぞ」
「っ…――はっあぅ!」
 返答を待たずに、秘所に硬い欲望を突き立てた。
 ぐちゅりと音を立てて、理樹の体内に肉棒が埋まっていく。
 俺のものを頬張ってぎちぎちに開ききる襞。狭くて熱い内部。
「くっ…」
 一月ぶりに抱いた理樹の身体に、思わず呻く。
 マジで、イイ…。
「理樹っ…」
「ん、んっ…あぁっ…!」
 細い腰を掴んで突き上げる。
 チクショウ。我慢なんて出来るかよ…!
 二人とも半分服を着たままで、本能のままに交わる。
 肉棒に絡みついてくる内部の肉壁を抉りながら、腰を打ち付ける。
 繋がった部分から断続的に響く濡れた音。
 荒い呼吸が二人分、暗い室内に満ちる。
 喘ぐ理樹にキスをして、その細い身体を揺さぶって――。
 耐えていた一月分の衝動を、思う存分解放する。
「んっ…う、…きょう、すけっ…も、出ちゃうっ…!」
「イケよっ……俺も、だ…」
 蜜の滴る前を強くこすって、感じる場所を突き上げてやる。
 理樹が顎を仰け反らせて、びくりと震える。
「ああっぁ――!」
 甘い悲鳴。先端から白濁液が吐き出され、同時に内部がきつく俺のものを締め付ける。
「っ…!」
 理樹の身体深くに肉棒を突き刺したまま、俺は奥歯を噛み締める。
 抱き締めて、最奥に叩きつけるように放った。
 荒い息を静めるように、二人でしばらく抱き合ったまま、じっと横たわる。
「…は、ふ…」
 耳元で、理樹が弱々しく吐息を洩らす。
 弛緩した身体と、トロンと潤んだ黒瞳が俺を見上げ――。
「――ぁっ…!?」
「理樹…」
 まだ硬いままだった俺の欲望は、一気に先ほどの勢いを取り戻す。
 抜かずに再度突き上げる。
「んぁっ、や…!」
「悪い…今日は、手加減してやれない」
 俺と理樹の体力差を考えれば、俺が我慢をするのは当然だ。
 いつもならセーブしているのだが…。
 一月分の衝動は大きいらしい。耐えきれずに、欲望のまま腰を打ち付ける。
 濡れきった秘所は容易く俺を飲み込んで、嬉しそうにひくつく。
 上がる甘い嬌声に目を細めながら、俺は理樹を再び組敷いた。

 
 
 
 
 

あとがき
 流石に年末は忙しく…中々更新出来ません…!こここんなしょぼいもの楽しみとか言って下さる天使の方々…すすすみませっ…

 ……まぁ、切羽詰まった恭介が書きたかっただけですよー…。がふっ…!えーろーダメな人は回避回避ーっ!(もう遅い…)
 そして何か出張っちゃいましたよ名もない女の人がー(笑)や、社会人編が入って来るとどうしても…。
 ああでも、社会人同棲編書くとしたら、爆弾落っことしてくれるのはこの名もない女の人だなーと思った…。あ、なんか展望見えてきた(笑)
 そして…前回の区切りを間違ってた事に気付きました(恥)ま、まぁいいか…。いや、ホントは前回の最後の抱き締められる描写は切ってたはず、
 だったんですが…うん、急いでUPしちゃいけませんね…。何の危機感も盛り上がりもないじゃねぇかっ(笑)メモリとかハードとか色々なトコに保存してるからこんな事に…。
 次は恭介のプレゼント…うん、奴だから(笑)。ううー仕事が何だー24日までに書き上げるっ…!チクショウ!イブに会社で待機とかふざけんなーーっ(恭介の呪いだ…)

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